2013 Fiscal Year Research-status Report
オープン・ソース・ソフトウェア供給インセンティブの解明:公共財供給理論による分析
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24730165
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
篠原 隆介 法政大学, 経済学部, 准教授 (40402094)
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Keywords | 公共財 / 公共財の私的供給 / オープン・ソース・ソフトウェア / スピルオーバー |
Research Abstract |
平成24年度の研究成果を踏まえて、平成25年度は、(a)ソフトウェアが準公共財である場合と、(b)各々のオープン・ソース・ソフトウェア(以下、OSSと略す)利用開発者(user-developer)が、ソフトウェアとそのアプリケーション間の補完性に関して異なる補完度合いを持つ場合について考察し、より精緻な分析を行った。具体的には、(a)においては、各ソフトウエア開発技術者のソフトウェア開発努力が、他の技術者にスピルオーバーするモデルを考察し、(b)においては、ソフトウエアとアプリケーションの補完度合いをパラメータ化し分析を行った。分析の焦点は、平成24年度の成果が上記2つの場合においても成立する可能性があるか否か、について明らかにすることである。 平成25年度の成果は、次の通りである。分析(a)については、技術者間のスピルオーバーの度合いが十分大きな場合には、ソフトウェアが純粋公共財である場合と同様の結果(つまり、平成24年度の研究結果)が成立することが明らかになった。分析(b)について、特に補完度パラメータに制約を置くことなく、平成24年度の研究結果と同等の結果が成立することが明らかになった。 これらの成果は、次の意味において、OSS開発において現実世界で観測される事象を説明するものとなる。OSSのソースコードは、一般に全て公開されるため、それはソフトウェア開発技術者にとって純粋公共財となる。一方で、現実には、一部のソースコードのみを公開するソフトウェアも存在し、ソフトウェア開発技術者間で、スピルオーバーが限定的となる場合もある。分析(a)への拡張的な分析により、OSSのみならず、一部のソースコードを公開するソフトウェアにおいても、そのソースコードの公開度合いが十分に大きく、そのスピルオーバー効果が大きい場合には、ソフトウェアとアプリケーション間の強い補完関係が、開発インセンティブを促進することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、理論経済学的な研究成果を得ることができている。また、新規の研究にも着手し始めている。この新規の研究成果は、今夏の国際学会において報告予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、本申請課題の最終研究年度であるため、研究の総括をしつつも、当初の計画通り、公共財の私的供給モデルを基礎とした理論経済学的な研究を継続する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画では、英語論文校閲費用を本研究費から申請する予定であったが、それを別の研究費から捻出したため、次年度使用額が発生した。また、国内学会費として見積もった旅費が、近隣大学での学会開催により、消化することができなかった。 平成26年度の研究成果においては、英語論文を執筆し次第、本研究費から英文校閲費を捻出することで、次年度使用額を使用したい。また、本申請課題における研究成果について、他研究者と意見交換するための旅費に充当する予定である。
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