2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24730169
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
山森 哲雄 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (50552006)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 貨幣錯覚 / 物価変動 / 異時点間の意思決定 / 労働市場 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、貨幣錯覚が労働市場における賃金決定過程に及ぼす影響を経済学実験によって検証することである。昨年度までに、①貨幣錯覚が異時点間にわたる意思決定問題に及ぼす影響について検証する実験、②相対賃金仮説を検証する実験、③労使紛争におけるコミュニケーションの役割に関する実験を実施した。最終年度である今年度は、①の実験結果をまとめた論文“An Experimental Study of Money Illusion in Intertemporal Decision Making”を、日本経済学会秋季大会および行動経済学会で報告するとともに、査読付き国際雑誌に投稿した。また、①および③の設計を変更した下記の実験を実施した。
物価トレンド(インフレ・デフレ)が異時点間の意思決定に及ぼす影響について検証する実験(4月と6月に実施):①の実験では物価変動によって貨幣錯覚が長期的に持続するという結果が得られた。今年度は、物価変動の大きさだけでなく、トレンドの影響についても検証し、貨幣錯覚はデフレ時よりもインフレ時の方が大きく、デフレ時の方が被験者の余剰は有意に大きいという実験結果を得た。
労使紛争におけるコミュニケーションの役割に関する実験(4月と5月に実施):③の実験では、不完備契約の状況において、労働者の「声」は使用者の提示賃金に影響を与えないだけでなく、当事者間の対立を先鋭化させ、総余剰に対してマイナスに作用するという結果が得られた。今年度は③の再実験を実施するとともに、完備契約の状況において労働者の「声」が賃金水準に影響を与えるか否かを検証した。その結果、③の実験結果が頑健であること、そして、完備契約の状況においても事前コミュニケーションは賃金に影響を与えないことが明らかとなった。これらの実験結果をもとに、論文“Voice Undermines Voluntary Cooperation: An Experimental Study for an Incomplete Employment Contract”を執筆した。
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