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2012 Fiscal Year Research-status Report

ロストジェネレーションの動学的一般均衡分析

Research Project

Project/Area Number 24730173
Research Category

Grant-in-Aid for Young Scientists (B)

Research InstitutionMeiji University

Principal Investigator

山田 知明  明治大学, 商学部, 准教授 (00440206)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords動学的一般均衡理論 / 経済格差 / 再分配政策
Research Abstract

本年度は、研究計画書に基づいてファクトの整理から研究を開始した。総務省統計局に「家計調査」及び「全国消費実態調査」の第33条申請を行い、1981年から2008年までの個票データを再取得した。
日本の財政再建・維持可能性に関する論文を共同研究で執筆した。現在、日本が直面している少子高齢化と巨額の政府債務が将来の世代間格差にどのような影響を与えているかについて、新しいMeasurement Deviceとなるモデルを構築して定量的に分析した。分析に際して家計行動のミクロ的基礎づけが必要になるため、上記の個票データを用いて個人の消費及び所得プロファイルを推計し、推計結果を用いてAccounting Exerciseを行った。分析結果は下記の通りである。今後何も財政再建の試みが行われない場合、政府債務の利払いが巨額となり、大きな世代間不平等を引き起こす。それを回避するためには、消費税を20%まで引き上げても足りないため、年金給付額の削減や女性の労働供給の拡大などの追加策が必要となる事を明らかにした。本論文は、一橋大学、学習院大学、日本銀行などのセミナーで既に報告済みで、現在、海外の査読誌に投稿中である。
また、日本経済における1980年代以降の所得・消費格差の時系列的推移から、構造変化の可能性についても探った。このプロジェクトは現在進行中で暫定的な結果であるが、日本では1990年前後に経済格差の推移に構造変化があったことが統計的に検出された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

研究計画書に記載したとおり、本研究は、世代効果が世代間格差と世代内格差を通じてロストジェネレーションに与えた影響を、動学的一般均衡モデルを用いて定量的に評価し、反事実的実験などから政策的含意を得る事を目的としている。研究目的を達成するためには、モデルの基礎となるパラメター及びターゲットとなる経済変数の実証的裏付けが必要になる。すなわち最終目的のために、(1)個票データを用いたファクトの整理、(2)定量的モデルの構築と数値計算プログラム、(3)モデルが現実とマッチする事を確認した上でシミュレーション分析から政策的含意を得る、という3つのステップが必要となる。
本年度で主に行ったことは、(1)と(2)である。パラメターを推計するためには、実証的ファクトの積み上げが必要になる。そのために総務省に個票データの利用申請を行った。個票データは情報量が膨大であり、全ての作業が完了したわけではないが、必要な推計が行えるような状態までデータの整理は完了している。
ステップ(2)のモデルについては、目的に応じて様々なモデルが考えられる。最終的には、ロストジェネレーションの厚生評価を世代間と世代内の異質性を同時に考慮した形で定量的評価に耐えうるモデルを構築する必要がある。その前段階として、まずは世代間格差が分析できるAccounting Exercise用のモデルを構築して、政策的含意を得る事に成功した。世代内の異質性を加えることは2013年度の課題であるが、現段階のモデルでも日本経済の様々な特徴(少子高齢化、国債、プライマリーバランス、公的年金制度とマクロ経済スライドなど)を含んだ定量モデルとなっており、政策シミュレーションのフレームワークとして十分な成果を得られており、途中成果としては順調である。

Strategy for Future Research Activity

2012年度に行った個票データに基づくファクト整理は未だ不十分であり、構築したAccounting Exercise用のモデルは、様々な方向に拡張の余地が残されている。
(1)ロストジェネレーションが他世代と比較してどれだけ厚生損失を被っているかを定量的に評価する必要がある。そのためには、個票データから消費や所得だけではなく資産保有に関する情報も必要になる。引き続きデータセットからファクトの整理を続ける予定である。
(2)Accounting Exercise用モデルから得られた結果は、今後の日本経済の労働力不足の深刻さを示唆している。しかし日本の労働力にはまだ拡大の余地が大いにある。例えば、ロストジェネレーションを中心とした現在30歳代は非正規雇用が多く、教育投資の成果である人的資本を必ずしも活かしきれていない。加えて、女性の労働供給の拡大なども考えられる。こういった政策は一方で労働供給を拡大する方向に働くが、賃金への影響は定かではない。また、近年では移民政策の是非も議論されるようになった。こういった労働政策がマクロ経済に及ぼす影響を正確に把握するためには大規模な定量的マクロ経済モデルを構築する必要がある。
(3)世代内の異質性を加えることによって、税制や教育政策を通じた世代間再分配政策と世代内再分配政策の影響も分析する。例えば、上記の移民は低スキル労働者に取っては賃金低下圧力を加速させるかもしれない。労働供給の拡大は、高スキル労働者と低スキル労働者の間で非対称な影響ともたらす。この影響を分析するためには、世代内の異質性の分析が欠かせない。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

2013年度は、2012年度に執筆した論文を報告するために、海外学会出張を予定している。具体的には、6月に韓国のソウルで開催される「Society for Economic Dynamics 2013」と、8月にスウェーデンのヨーテボリで開催させる「European Economic Association - Econometric Society European Meeting 2013」にて報告が決定している。また数値計算用のソフトウェアの購入・更新をする計画である。論文は原則として英語で書くため、海外の学術誌に投稿する前に、ネイティブによる英文校閲を予定している。

  • Research Products

    (3 results)

All 2013 Other

All Presentation (2 results) Remarks (1 results)

  • [Presentation] Achieving Fiscal Balance in Japan2013

    • Author(s)
      Tomoaki Yamada
    • Organizer
      European Economic Association - Econometric Society European Meeting
    • Place of Presentation
      University of Gothenburg
    • Year and Date
      20130826-20130830
  • [Presentation] Achieving Fiscal Balance in Japan2013

    • Author(s)
      Selahattin Imrohoroglu and Tomoaki Yamada
    • Organizer
      Society for Economic Dynamics
    • Place of Presentation
      Yonsei University
    • Year and Date
      20130627-20130629
  • [Remarks] Tomoaki Yamada's HP

    • URL

      https://sites.google.com/site/tyamadaeconomics/

URL: 

Published: 2014-07-24  

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