2012 Fiscal Year Research-status Report
最適資源配分政策に関する理論的研究-生産性格差・レントシーキング活動の影響-
Project/Area Number |
24730182
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
土居 潤子 関西大学, 経済学部, 准教授 (00367947)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 異質性 / レントシーキング |
Research Abstract |
少子高齢化と財政赤字に苦しむ我が国にとって、安定した経済成長は、厚生の観点からだけではなく、社会保障・安全保障の観点からも非常に重要な問題である。海外市場の獲得は、成長戦略上極めて重要であるが、日本の国際競争力は、1位(1990年)から22位(2008年)へと下落している。なぜ、国際競争力が低下してしまったのだろうか。さらに、バブル崩壊以来、巨額の政府支出を行ってきたにも関わらず思うように景気は回復していない。なぜ政府支出の効果は限定的なのであろうか。本研究は、これらの要因を「レントシーキング活動-より多くの補助金獲得、より自社に有利な条件の創出のために政治家等に働き掛ける行為-による資源配分の歪み」に求める試みである。 本年度は、政府支出の増加が、レントシーキング活動にどのような影響を及ぼすか、また、その結果、企業の参入・退出にどのような影響を及ぼすかについて理論モデルを構築し分析を行った。さらに、それらの分析を元に、失業率や経済厚生に与える影響についても分析を行った。 政府支出を増加させたとき、企業の生産性の分布の形状等に依存して、レントシーキング活動を誘発し、低生産性企業の退出が進まない場合であっても、それらによって雇用が確保され、経済厚生を上昇させることができる場合があること、逆に、低生産性企業が退出し、経済全体の平均生産性が上昇しても失業を増加させて経済厚生を低下させる場合があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、政府支出の増加が経済諸変数にどのような影響を与えるかについて、理論的に明らかにすることである。このため、企業の生産性に関して異質性を導入したMelitz(2003)モデルを基礎として、レントシーキング活動と失業を導入したモデルを作成し、政府支出の増加が経済へ及ぼす影響について分析した。その結果、政府支出の増加は、レントシーキング活動を誘発し、低生産性企業を温存させる結果、産業の交替(企業の参入・退出)が進まず経済全体の平均生産性を低下させてしまう(注:条件によっては逆の現象も起こりうる)というメカニズムを理論的に明らかにすることができた。よって、研究はおおむね順調といえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本年に作成したモデルを元に、レントシーキング活動による資源配分の歪みが経済厚生を悪化させるように作用する場合について、それを改善する政策を理論的に提示し、その政策の現実妥当性について検討を加えていきたい。また、国内・国外を問わず学会・セミナーなどでの発表を通じて、また、研究協力者の意見を聞きながら、モデルの改良を重ね、研究を促進していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外学会への参加が思うようにかなわなかったなどのために当該研究費が生じた。次年度においては、国内・海外学会への参加、ソフトウエアの購入、研究協力者との打ち合わせ等において使用する計画である。
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