2015 Fiscal Year Research-status Report
最適資源配分政策に関する理論的研究-生産性格差・レントシーキング活動の影響-
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24730182
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
土居 潤子 関西大学, 経済学部, 教授 (00367947)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異質性 / ロビー活動 / 関税 |
Outline of Annual Research Achievements |
少子高齢化社会に入ったわが国にとって、安定した経済成長は厚生の観点からだけではなく社会保障・安全保障の観点からも非常に重要な課題である。しかしながら、近年、国際競争力は低下し、政府支出の効果も限定的であるといわれている。本研究は、これらの要因を、「レントシーキング活動―より多くの補助金獲得、より自社に有利な条件の創出のために政治家等に働きかける行為―による資源配分の歪み」に求める試みである。 今年度は、これまでに構築した閉鎖経済モデル(生産性が異質である企業を前提に、各々の企業が自社の利潤最大化を目指してレントシーキング活動を行う想定の下で、政府支出の効果を分析した)を、開放経済モデルに拡張して分析を行った。特に、TPP(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)締結に向けての交渉過程で取り上げられたような問題点を勘案し、関税を維持するためのレントシーキング活動が経済に与える影響について理論モデルを作成し分析した。 その結果、レントシーキング活動が経済にもたらす影響は、「ロビー活動の効率性」または、「国内財と外国財の代替の弾力性」に依存することが明らかになった。「ロビー活動の効率性」または、「国内財と外国財の代替の弾力性」が大きい経済では、企業が政府に対する働きかけを強めるため、企業の負担は増加する。このため、より多くの利潤を確保することが必要となるため、カットオフ生産性は上昇し企業数は低下する。また、政府が設定する関税率も高くなるため、物価水準が上昇し経済厚生が低くなる。ロビー活動の効率性が低い経済、または、代替の弾力性が低い場合には、逆の結果が成立することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
関税を掛けることにより輸入を完全に阻止できる場合と、関税により輸入を最小限にとどめ利潤を確保できる場合の2つのケースについて分析を行った。このため2本の論文を作成することができている。この2本の論文について、研究会等での報告を通じて改善を進めており完成に向けておおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
閉鎖経済においてレントシーキング活動による資源配分の歪みが経済厚生を悪化させる場合について、歪みを是正し経済厚生を改善する政策を理論的に提示し、その政策の現実妥当性について検討を加えていきたい。また、開放経済モデルについては、経済厚生の比較に関して、より現実を説明できるように数値例を精緻化する必要がある。これらを改善し、論文の修正を進める。また、国内・国外を問わず学会・セミナーなどでの発表を通じて、モデルの改良を重ね、研究を促進していきたい。
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Causes of Carryover |
これまでの本研究課題の遂行において開発したモデルを用いて、新たなテーマに取り組んでいたところ、複数の成果を挙げられることが分かった。このため、研究期間の延長を申請して研究を継続し、さらに良い成果を得るために次年度に学会報告等を行うことを前提に執行したため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度においては、国内・海外学会への参加、共同研究者との打ち合わせ、また、関連する研究を行う研究者に専門知識の提供を受ける際の謝金、英文校正費等に使用する計画である。
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