2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730193
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白石 博 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (90454024)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 最適ポートフォリオ / 統計的推定 / 漸近理論 / 高次元データ / ランダム行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、資産数が十分大きいという状況下での最適ポートフォリオを理論的および実務的観点から構成することを目的としている。平成24年度から平成26年度は、各資産の収益率過程がある有限個のファクターとそれに無相関な確率ベクトルで定式化されるファクターモデルに従うと仮定した上での最適ポートフォリオの構成を研究した。このような状況下では、Ao, Li and Zheng (2015) がLASSOタイプの最適ポートフォリオを提案し、数値的結果も導出していることが判明した。
一方、平成27年度は、各資産の収益率で生成される確率ベクトルの分散共分散行列がフルランクである場合についての調査も行った。このような状況下の問題は上記の設定よりも歴史は古く、Bai, Liu and Wong (2009)など、幾つかの仮定の下での最適ポートフォリオ推定量を提案している。ただし、この分野でのテーマの1つである有効フロンティアを解析するためには議論が不十分であり、研究の余地が十分あることが判明した。
具体的には、先行文献の仮定では、標本サイズが大きくなるに連れて(真の)有効フロンティアは座標軸上に収束してしまう。このような状況では有効フロンティアを評価する意味がなくなってしまうため、標本サイズが発散した場合でも(極限)有効フロンティアが存在するという仮定をした。その上で、最適ポートフォリオ推定量の一致性を議論し、漸近正規性を導出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画していたファクターモデルに対するポートフォリオ解析については、先行研究が既に行われていることが判明した。この先行研究についても改良が期待されるが、そのためには更なる調査が必要と思われる。
一方、本年度は大きく方向転換し、比較的古典的な内容での先行研究の改良に重点を置いて研究した。その結果、更なる研究の余地があることが判明し理論的結果も一部導出したが、論文としてはまだ未完成であり、本研究課題完遂のためには、数値シミュレーションおよび経験データを用いた検証が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、理論的結果を全て導出する。具体的には、推定量は提案出来ているが、その一致性および漸近正規性を導出する。更には、漸近分散共分散行列の一致推定量を提案し、有効フロンティアの信頼領域を構成する。
理論面での結果の導出と並行して、数値的結果を得る。まずは、モデルから標本を生成した上で提案手法の正当性を数値的に確認する。最終的には、実際のデータを用いて多くの資産に対する最適ポートフォリオを構成し、そのポートフォリオに対する最適性を経験データを用いて確認する。
|
Causes of Carryover |
当初計画していたファクターモデルに対するポートフォリオ解析からの方向転換により、当初の研究計画と比較すると、全体的にやや遅れが生じている。昨年度は、新しい設定の下での理論的な結果の導出に一部成功したが、未解決な点が残っている。このため、研究成果の発表に予定した旅費が未消化となった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、理論的な結果の導出および数値的解析を並行して行う。その上で、得られた成果を国内の学会またはシンポジウムにおいて発表する。このための旅費として使用する計画である。
|