2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730194
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山口 圭子 早稲田大学, 商学学術院, 助教 (60534964)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 時系列分析 |
Research Abstract |
長期記憶性を持つデータ(ショックの影響の持続性が強く、スペクトルが原点で発散するようなデータ)は経済・ファイナンスなど様々な分野において観測されている。フラクショナル和分過程(I(d)過程)は長期記憶性を表現できるモデルとして多方面に利用されている。特に経済データには非定常性を示すものが多いが、理論・技術的な難しさから非定常I(d)過程の分析手法が開発されたのは近年になってからである。そこで本研究ではShimotsu (2010)の手法を用いて、定常I(d)過程において提案されている非線形モデルや多変量モデルを非定常I(d)過程へ拡張することが目的である。 今年度は見せかけの長期記憶性に関する研究を行った。短期記憶過程に平均変化が加わったデータのスペクトルも原点で発散することが知られており、このような現象をみせかけの長期記憶性という。しかしながら、データが長期記憶性をもつかどうかは、予測や回帰係数の信頼区間などの推測に大きな影響を与えるので、見せかけの長期記憶性を検出する検定を提案した。本研究の検定方法に近いものにはQu(2010)があるが、提案手法は非定常データにも適用できる点が異なる。 まず帰無仮説のもとでの検定統計量の極限分布を理論的に導出した。その結果、極限分布はパラメータdに依存したので、棄却点はシミュレーションにより求めた。つぎに、対立仮説のもとでの検定統計量の一致性を理論的に示した。さらに、有限標本での有用性を調べるためにシミュレーション実験を行った。その結果、サンプルサイズが小さい時には、Qu(2010)よりも検出力の高い場合があることがわかった。 以上の結果をWaseda Statistical Symposium on Time Series and Related Topicsで報告し、内外の研究者より多くの有益なコメントを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、2つのトピック(A)見せかけの長期記憶性の検定、(B)フラクショナル共和分検定、について各々1年程度で研究する予定であった。24年度に(A)の研究の理論的な部分について発表することはできた。しかし、研究機関を変更することが分かり、途中で中断・再開する手間を省くために少し研究を遅らせたので、実証分析をして論文を完成させて投稿するところまで至らなかった。25年度は(B)の研究を進めつつ、(A)の論文を投稿したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず(A)見せかけの長期記憶性の検定、に関して24年度に出した結果に実証分析を付け加えて論文にまとめて投稿する。また、2つめのトピック(B)フラクショナル共和分検定、に関しても(A)と同様に理論・シミュレーション実験・実証分析を行い、一定の成果を得た時点で国内外の学会において発表し、最終的には国際的なジャーナルに投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究機関を変更することが分かり、途中で中断・再開する手間を省くために少し進捗が遅れた。そのため、実証分析に必要なソフトや論文の英文校正に必要な研究費が繰り越されることとなったが、25年度中に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)