2012 Fiscal Year Research-status Report
日本の産業構造の経済分析:国際貿易論にもとづくアプローチ
Project/Area Number |
24730201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
清田 耕造 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 准教授 (10306863)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際貿易 / 産業構造 / ヘクシャー=オリーン・モデル / 要素賦存 |
Research Abstract |
"The Flying Geese Patterns of Industrial Development" 赤松要博士は,赤松(1935, 1937, 商業経済論争; 1961, Weltwirtschaft Archiv)の一連の研究において,産業発展に関する二つの実証的規則性を発見した.第一は,時間を通じて,ある産業において,輸入から輸入代替,輸出へと貿易,生産のパターンが変遷していくことである.そして第二は,時間を通じて,異なる産業間で,国内生産が次々とシフトしていくことである.これらの規則性は,雁が群れをなして飛んでいるように描かれることから,「雁行形態」的産業発展と呼ばれている. 本研究は,上記の二つの「雁行形態」的産業発展のうち,「時間を通じて,異なる産業間で,国内生産が次々とシフトする」パターンに焦点を当て,日本の要素賦存の変化と産業構造の変化の間にこのような「雁行形態」的産業発展パターンが観測できるのかを検証した.分析には,1975年から2006年までの日本の要素賦存のデータ,および産業別の産出・要素集約度のデータを利用した.研究の特徴は,国際貿易理論の一つであるヘクシャー=オリーン・モデルの中でも,特に複数の不完全特化錐,すなわち,マルチプルコーンのモデルを用いている点にある.分析の結果,日本の要素賦存の変化と産業構造の変化の間に系統的な関係があることが明らかになった.具体的には,資本蓄積に伴い,より資本集約的な財の生産へと生産パターンがシフトしていくというものである.この結果は,要素賦存の変化が産業構造の変化に影響していることを示唆しており,日本の「雁行形態」的産業発展を貿易理論の視点から確認するものである.この研究の成果は査読付きの国際的な学術雑誌の一つであるReview of Development Economicsに掲載されることが決まった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は,実証分析に必要なデータベースの構築と,既存の研究(Kiyota, 2012, Journal of International Economics)の拡張に力を注ぐことを目標としていた.平成24年度は, 1) 研究計画に従い,データベースの構築をある程度進めることができた. 2) これと並行して,日本の要素賦存の変化と産業構造の変化に注目した"The Flying Geese Patterns of Industrial Development"の研究を進めることができた. 既に2)の研究成果が査読付きの国際的な学術雑誌の一つに掲載が決まっていることから,概ね順調に進展していると評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
日本の産業構造の変化に伴い,日本の輸出する財の資本集約度や技術集約度は(輸入と比較して)上昇しているのだろうか?この疑問に答えるため,これまでに整備した要素賦存と貿易,産出のデータをもとに,日本の輸出入の要素コンテンツの推計を進めている.また,Courant and Deardorff (1992, Journal of Political Economy)の研究では,地域間の要素賦存の異質性が比較優位にもとづく貿易パターンを歪める可能性があることを指摘している.これと並行して,日本の要素賦存が都道府県の間でどの程度同質的か,それが産業構造とどのような関係にあるのかについての分析を進めていく予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は,高速な計算を可能とするコンピュータの導入を考えている.また,本年度以降,国内外の様々な学会で報告することを考えているため,出張旅費にウェイトを置く形になっている.なお,当初想定していたデータ収集・入力の謝金を節約できたため,次年度使用額が発生した.この次年度使用額は物品購入,出張旅費,本年度の謝金を補てんする形で活用する予定である.
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