2012 Fiscal Year Research-status Report
リカード・モデルにおける中間財等を含む世界経済の生産・貿易体制の理論的研究
Project/Area Number |
24730206
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
小川 健 広島修道大学, 経済科学部, 助教 (10622201)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中間財貿易 / 結合生産 / リカード・モデル / 特化パターン / 生産可能性フロンティア / 副産物 |
Research Abstract |
従来のリカード・グラハム・モデルや中間財貿易のあるモデルでは一致していた生産パターンと貿易パターンのかい離が結合生産のあるモデルでは存在することが分かった。生産パターンと切り離して貿易パターンを考える場合には、貿易パターンの解明は純粋交換経済に帰着できる。そこでまずは貿易パターンの解明から先に取り掛かり、本来的には副産物と思われていたもの同士を輸出する可能性が存在することを明らかにし、広島修道大学・経済科学部・論集「経済科学研究」に掲載した。 次に、本研究を進める鍵となる設定の1つに、国の数と財の数が同じ場合を先に解明するという特徴に着目した。これは先行研究のJones(1961)以来行われてきた設定であるが、国の数と財の数が異なる場合は、中間財貿易や結合生産が入る前の段階での解明が十分ではなかった。そこで国の数と財の数が異なる場合にJones(1961)の結果であるジョーンズの不等式をどのように適用するかを明らかにする、という本研究の前提となる研究を行った。査読を経てEconomics Bulletinに掲載された。本論文を以て、中間財貿易や結合生産を取り入れた研究が基盤とするべき土台ができた。 そして、本研究では副産物の正確な定義の設定に取り掛かった。副産物は身近な用語であるが、経済学で副産物を扱う結合生産においては、副産物を正確に扱う方法はあまり知られていない。しかし、先行研究にある小川(2011)のような方法、さらにはもっときつくした優対角行列を利用した方法で副産物を定義すると、従来の研究で中心の生産者割当問題に解の存在しない例が出てくることが分かった。そこで解の存在が知られている中間財貿易の形に落とし込んで解の存在を示すことで、従来研究に整合的な副産物の定義ができた。本研究は学術報告を経て、ワーキングペーパー登録を申請した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を行う上で、当初は東田(2005)や小川(2011)の研究を基に、Ogawa(2012a)のような図解による分析を結合生産・中間財貿易に対して行うことを1年目には想定していた。そこでは3国3財や4国3財モデルによる検討を主に想定していた。従来のモデルではOgawa(2012a)のように、3国3財モデルにおいても図2枚で本質的におさめることができた。しかし、結合生産や中間財貿易が含まれると、2国3財モデルの段階で図解が48通り存在し、3国3財や4国3財モデルを検討すると何百・何千通りの収拾が付かなくなってしまった。2国3財モデルによる図解の分析に関する先行研究が、この図解の原案を提示したAmano(1966)の例示に限られ、分類などは行われていないので、本研究ではまず2国3財モデルを取り上げた。 本研究では1年目に基礎力強化を他には取り上げた。しかし研究を進める上で、本研究で前提とすべき事項が幾つか欠けていることが明らかになった。まず多数国・多数財のリカード・グラハム・モデルにおいて、国の数と財の数が異なる場合へのジョーンズの不等式の適用方法が明らかになっていなかった。そこでOgawa(2013)においてその点を明らかにした。次に、本研究で前提とするつもりであった小川(2011)の副産物の定義では、Jones (1961)以来重視されてきた生産者割当問題に解が存在しない可能性があること、池間(1993)の図解が使えない可能性があることが明らかになった。そこで生産者割当問題に解が存在する副産物の定義の1つを明らかにし、その上でこの定義の下では池間(1993)の図解が使えることを明らかにした。また、この副産物の定義を一般次元まで拡張した。 1年目は本研究の基礎を固める段階である。当初の予定通りとはいかなかったが、基礎を固めるという意味では固めることはできたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は1年目の知見を基に、中間財貿易や結合生産の入ったn国n財モデルにおいて効率的な特化パターンを決める分析を行うことを念頭に置いている。3国3財以上の場合には効率的な特化パターンは複数出てくることがあることが、東田(2005)・小川(2011)の研究により既に明らかになっている。3財モデルで図解を利用した分析を行う中で、単に効率的な特化パターンを決定する分析以外に、その中で一意性を絞り込む分析の必要性が明らかになった。本研究ではそうした両面を取り上げることを念頭に置いて分析を行うことを想定している。この分析が完成次第、国と財の数が異なる場合や、それ以上に生産プロセスの数が異なる場合などへの一般化などを想定している。また、可能であれば国際輸送などの輸送費を考慮に入れた拡張や、消費者側の経済厚生を入れた分析へと拡張の可能性を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目も1年目に引き続き、研究報告・調査のための学会や研究会などへの参加を精力的に行うため、旅費による使用をまず予定している。次に、投稿に向けた英文校正が必要になると考えられるので、英文校正費による使用を予定している。調査のための資料も引き続き必要になると考えられるので、資料費による支出を予定している。
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Research Products
(12 results)