2013 Fiscal Year Research-status Report
リカード・モデルにおける中間財等を含む世界経済の生産・貿易体制の理論的研究
Project/Area Number |
24730206
|
Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
小川 健 広島修道大学, 経済科学部, 助教 (10622201)
|
Keywords | 中間財貿易 / 結合生産 / 特化パターン / 多数国・多数財 / 図解 / 線形経済 / 生産可能性フロンティア / 端点 |
Research Abstract |
本研究は中間財貿易や結合生産の入った世界経済における効率的な(生産可能性フロンティア上の生産点特に端点を構成する)生産・特化パターンを多数国・多数財の世界で解明することを目的としている。また、結合生産の入った世界では生産・特化パターンと貿易パターンが異なる可能性があり、貿易パターンの解明が別に必要になる。1年目においては貿易パターンの解明を先に取り組んだ。加えて、1年目から2年目で、副産物の定義や図解の使用可能性の解明なども行った。 この解明を考える上で、国の数と財の数が異なるなどの一般的な状況においては条件にも多岐に渡る場合分けが必要であることが、中間財貿易や結合生産のない先行研究においても知られている。先行研究では国の数と財の数が一致している場合を解明し、それで本質的に解決がなされたと扱われていた。しかし、具体的な当てはめ方に関してはまだ解明が不十分であったため、1年目は中間財貿易や結合生産のない場合における多数国・多数財での状況を、国の数と財の数が異なる場合に同じ場合の理論がどう適用できるかについて扱った。2年目においては、この分析を結合生産のある場合に拡張した。結合生産のある場合への拡張方法は直ちに中間財のある場合へ拡張される。また、中間財や結合生産のある場合においては、国の数と財の数の他に生産工程の数が各国で異なる可能性なども検討の必要がある。2年目の研究ではこの方向性も取り上げた。 今後は、国の数と財の数が同じ場合における条件の解明を行うことが求められる。特に、図解が可能な3国3財において、解の一意性が崩れる可能性は指摘されているが、一意性が成り立つための条件と成り立つ場合の条件との解明を優先し、その上で一般化することが求められる。また、先行研究に整合的な、中間財投入の費用や結合生産での副産物価格に左右されない意味で強い効率性を持つ特化パターンの解明が求められる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メインとなる、国の数と財の数が同じ場合の生産可能性フロンティア上の端点を構成する特化パターンの解明に時間がかかっているので、先に周りから攻めている。結合生産の場合における特化パターンとは異なる貿易パターンの解明や、国の数と財の数が同じ場合の理論が完成した場合に国の数と財の数が異なる場合への適用、さらには副産物の定義等を先に解明した。 メインの条件の解明には、(1)当初想定していたフロンティア上の端点を単に形成するための条件の解明の他に、(2)先行研究に整合的な、中間財投入の費用や結合生産での副産物の価格に左右されない意味で強い効率性を持つ特化パターンの解明が必要となる。(1)はさらに(3)フロンティア上の(ある意味で)「一意的な」端点を形成するための条件の解明が重要であることが分かった。(2)、(3)に関しては3国3財の図解での解明方法はおおよそイメージでき始め、(2)については一意性の条件の解明も道筋はついてきて、残された問題である解の存在条件に関しても概形のイメージはできてきた。(1)についても数学的な条件付けは(少し特殊ケースを排除しているが)おおよそ道筋はついてきたので、あとは経済学的な意味づけなどが残っている。 そのため、論文化が終了した部分はまだまだ少ないが、解明は比較的順調に進んできているという実感を持っている。今後はこの道筋を文章化して細部を詰めることで、かなりの部分が進むのではないかと考えている。 さらに、この分析の前提となる図解の使用可能性に関して、結合生産の場合にはおおむね終了している。中間財の場合にはこの分析に加えて、更に自給自足の可能性が崩れた場合の指摘が必要になるが、自給自足可能である条件は暗黙の仮定であることが多いので、中間財の場合にもおおよそ適用可能になる。
|
Strategy for Future Research Activity |
メインとなる、国の数と財の数が同じ場合の生産可能性フロンティア上の端点を構成する特化パターンの解明を一定程度完成させる。本解明は(1)当初想定していたフロンティア上の端点を単に形成するための条件の解明の他に、(2)先行研究に整合的な、中間財投入の費用や結合生産での副産物の価格に左右されない意味で強い効率性を持つ特化パターンの解明、(3)フロンティア上の(ある意味で)「一意的な」端点を形成するための条件の解明、の3項目に分かれていて、ある程度道筋は見えているものが多い。(1)~(3)は<1>3国3財のような図解が可能な場合、<2>一般次元のように図解はそもそも不可能な場合、でアプローチの方法が異なるので、それぞれの手法で解明を一定程度完成させる。(2)は解の存在条件と組み合わせる必要があり、合わせて行う。 最も重要な(3)の一般次元における解明は道筋がまだ見えていないので、本研究を推進する上では文章化できる所を先に行い、(3)の一般次元における条件解明に集中することを考えている。 本研究を始める上ではその重要性が分からなかった、副産物の定義に関してもある程度の解明は行っているが、まだ条件が複雑なので、条件の簡明化は研究を行う上で重要と考えられる。 加えて、本研究は産業連関分析などの手法を応用することで実証的な裏付けが可能になる可能性がある。余力があればそうした方面にも手を広げ、実証的な裏付けのある理論にすることを考えている。 さらに、理論の発展や現実との対応関係を考える上で、輸送費の導入などは重要であり、それで特化パターンが変わることも考えられる。不完全特化が必要になる可能性も一部に残るため、この解明も重要な課題であると考えられる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年目は研究の進展において、解明の道筋はある程度見えたものが多かったが、論文化においては作業が少し遅れたため、研究発表まで至らなかったものがあった。そのため、学会報告等や英文校正などが少なくなり、差額が生じた。 道筋の見えた研究の論文化とその英文校正、学会報告費用に充てることを主に念頭に置いている。また、一部では英文への翻訳などに充てることも検討している。
|
Research Products
(9 results)