2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 泰裕 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (30332703)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 経済政策 / 経済理論 / 都市経済学 / 地域経済学 / 空間経済学 |
Research Abstract |
今年度は、以下の三つの事柄についての分析結果を査読付き雑誌に公開した。まず、人々のスキル形成を明示的に取り込んだ貿易モデルを構築し、貿易の活性化が、スキル形成および賃金格差にどのような影響を及ぼすのかを理論的に分析した。その結果、貿易がスキルや人的資本形成を促進することが分かった。特に、この効果が、名目所得格差の拡大を通じて生じるだけでなく、名目所得格差が一定であっても、そこから得られる効用、すなわち実質所得の格差を拡大させることで生じ得ることを示した。 次に、空間経済学の枠組みを用いて、地域の市場規模が、人々の起業行動にどのような影響を持ちうるのかを理論・実証両面から明らかにした。その結果、地域市場規模の拡大は、企業同士の競争を激化させて、起業を抑制させる効果と、自国市場効果を通じて起業を促す効果の両方を持つが、日本においては、中小都市では前者が、大都市では後者が支配的であることが明らかになった。 三つめに、都市における転職行動と移住行動との関係を分析し、転職パターンと、都市内移住パターンとが対応しうること、そして、それを通じて、企業の求人供給行動が歪められてしまうことを明らかにした。 これらの三つの研究は、空間構造と職業選択とが密接に関係していることを示しており、地域経済政策がどのように労働市場にまで波及しうるかを解析するための土台になるものであると考えられる。 これらとは別に、資源賦存量が異なる地域の間で移動可能な生産要素がどのように分布し、それに対して地方自治体がどう反応するのかを分析した研究を、経済産業研究所のDPとして公開した。この結果は、現実の地域経済政策、特に企業誘致政策を理解する上できわめて有用であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に計画していた分析はほぼ完了し、細かい修正を施す段階に入っている。また、予定していた学会報告なども共同研究者の協力により行い、参加者から指摘された点の修正も完了しているため、予定通り、査読付き雑誌に投稿するための準備に入っている。以上の理由より、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた理論的結果を可能な限り実証的に検証する予定である。また、現段階で解析途中の、複数地域のジョブ・サーチモデルを用いた地域労働市場統合の効果の分析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込額と執行学は異なったが、研究計画に変更は無く、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Research Products
(4 results)