2013 Fiscal Year Research-status Report
人的資本投資の決定において、摩擦のある労働市場が果たす役割
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24730213
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
俵 典和 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (10517618)
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Keywords | 労働市場 / サーチ摩擦 / 人的資本投資 / 動的一般均衡モデル / 課税 |
Research Abstract |
初年度は、DMP型の労働市場の動的モデルに、家計または労働者による人的資本投資の意思決定を取り入れ、定常状態の定性的分析を行った。ここでは、他の家計の人的資本投資が、生産者の労働市場参入の意思決定に影響を与えることで、当該労働者の投資決定にも影響を与えるところが、分析の焦点の一つになる。また、tentativeではあるが、米国の労働市場および教育関連データを用いて、当該モデルのパラメタライゼーションを行い、定量的評価を行った。 当該研究の目的のためには、上記分析では十分ではなく、課税および労働市場政策への含意が、労働市場の摩擦を入れることで、どのように影響を受けるかを分析する必要がある。そのために、当該年度においては、まず、初年度に作成されたモデルに、労働所得に課税を取り入れ、当該税収を、(1)家計にlump-sum(一括)の形で再配分する場合、(2)教育投資の一部費用に使用される場合、(3)企業の参入費用の一部に利用される場合等を、解析的、定量的に分析した。(1)のケースは、分析は容易であり、動的一般均衡・成長モデルで課税の影響を分析した多くの文献が、その枠組を利用している。一方、(2)と(3)のケースは、lump-sumの配分を認めない設定では、政府の予算成約を満たすように、税率の決定を内生的に計算しないといけない。 Tentativeではあるが、理論的な成果としては、税制が人的資本に与える影響については、摩擦のない設定では、多くの文献があるが、摩擦を取り入れた設定での分析との比較を行った。さらに、課税の影響と共に、教育政策、労働市場政策についての、興味深い結論が 得られた。例えば、政府の予算成約を勘案した下で、学費削減と、それに伴う増税の影響による教育投資への影響を、定量的に評価し、当該大きさが、労働市場の摩擦の設定に依存することは、重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各個人の投資の意思決定を含むサーチ均衡を計算するループの外側に、整合的な税率を計算するループがあるため、当該均衡を計算するコードを作成することや、その解析的分析に、予想以上に時間がかかった。 関連文献も膨大であり、現在進行形で、多くの関連研究が、国際査読雑誌で報告されている。それをフォローすることにも、予想以上に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度については、前年度において得られた分析内容は、tentativeである内容があるので、引き続き、分析の検証、解析的な分析の改善、証明の精緻化等を行う。前年度は、主に、public financeの側面を分析したが、解雇税や失業保険(サーチへの補助金)等の労働市場政策の分析も、可能であれば、実施する。その場合は、モデルの設定を拡張することが望 ましい。最終的には、労働経済、マクロ経済、教育経済等の国際査読誌への投稿可能な形に、分析の精緻化、モデルや既存研究との比較の表現方法の改善、研究者からのコメントの獲得、研究会での報告等を予定する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定の書籍の手配が間に合わなかった。 予定していた書籍の購入を行う。
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