2014 Fiscal Year Research-status Report
都市圏の脆弱性を考慮した社会資本整備の経済的評価手法に関する実証的研究
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24730215
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
朝日 ちさと 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 准教授 (90457812)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 脆弱性 / 社会資本整備 / 都市規模 / 水道 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、都市圏の社会経済活動における不確実性(災害、エネルギー・水資源の非都市圏への依存、財政基盤の変化等)に由来する都市の脆弱性に着目し、その対策としての経済主体の安全と安心を確保する社会資本整備の効率的な水準を明らかにするために、不確実性を明示的に採りいれた社会資本整備の経済的評価手法を提示することを目的とする。 本年度は、1.脆弱性の経済的評価のWeb調査による実証分析 2.不確実性下の都市規模に関する理論的検討 3.都市雇用圏データ作成 を実施した。 1.脆弱性の経済的評価のWeb調査による実証分析:前年度の予備調査に基づき、水道を事例として断水リスクに関する脆弱性評価モデルの実証分析を行った。伝統的意思決定理論とプロスペクト理論を比較し、後者を仮定したモデルの有意性が確認された。結果については、次の学会発表と論文にまとめた。「リスク下の意思決定特性を考慮した社会資本整備のリスクプレミアムの便益評価に関する考察」日本地域学会第51回年次大会発表,2014年10月(共著)、地域学研究投稿中(共著)、他発表1件。 2.不確実性下の都市規模に関する理論的検討:不確実性による脆弱性が都市規模に反映されるとの理論的知見を、脆弱性が災害等の集合リスクである場合に拡張し、都市規模に与える影響を理論的に検討した。結果については、次の学会発表と論文にまとめた。「不確実性下の都市規模と公共財供給に関する基礎的考察」日本地域学会第51回年次大会,2014年10月、「都市規模のリスク分散効果と公共財供給に関する詩論」都市政策研究,第9号,pp.69-79,2015年3月。 3.都市雇用圏データ作成:前年度に引き続きデータ作成を行った。1.で水道を事例とした実証分析を他の社会資本で一般化するため、他の社会資本項目について都市雇用圏への按分作業を継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
1.の実証分析および2.の理論的検討により、評価モデルの比較と一般化のために分析に用いる社会経済データの追加が必要であることが明らかとなった。具体的には、実証分析の比較のために実施する道路等他の社会資本について、リスク・脆弱性改善の指標とする市区町村データである。そのため、3.の追加データ収集およびそれらを都市雇用圏に按分するデータ作成作業を実施しており、2回目のweb調査の実施および当該結果の成果発表、および全体の結論の整理が未実施となっている。なお、これらの遅延のため、平成27年度への研究期間の延長を申請し認められたところである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、主に2つの分析を実施する。第一に、Web調査による脆弱性の経済的評価の2回目を実施し、今年度の分析と比較しモデルの改善を図る。また、脆弱性に関する社会資本整備の評価を、プロスペクト理論等の意思決定理論の精緻化によって改善するための知見としてまとめる。第二に、実績概要で示した「2.不確実性下の都市規模に関する理論的検討」に基づき、都市雇用圏の集合的リスクに関する属性と雇用圏規模に関する実証分析を実施する。これにより、新たに都市の規模の観点から脆弱性を評価するための要件を明らかにする。 それぞれを学会および投稿論文により発表したうえで、2つの枠組みを比較・統合し、不確実性を明示的に採りいれた社会資本整備の経済的評価手法に関する知見を提示する。
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Causes of Carryover |
今年度は、前年度に作成した都市雇用圏のGIS表示データと社会経済指標を利用し、リスク認識および仮想的な回避選択行動に関するwebアンケート調査(2回目)を実施する予定であったが、1回目の調査結果により分析に用いる社会経済データの追加が必要であることが明らかとなった。追加データ収集および都市雇用圏への按分データ作成作業中であるため、web調査(2回目)の実施および当該結果の学会発表等の経費について未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
追加データ作成後に行うweb調査および学会発表を実施する予定であり、未使用額を当該調査および発表の経費に充当する。
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Research Products
(8 results)