2012 Fiscal Year Research-status Report
放送・通信における電波の効率的な配分と利用に関する理論・実証研究
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24730223
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Keizai University |
Principal Investigator |
黒田 敏史 東京経済大学, 経済学部, 講師 (80547274)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 周波数オークション / 放送 / 通信 / 混合抱き合わせ |
Research Abstract |
本年度は放送市場の構造変化の整理と、放送市場のアクセス層の需要要因の分析、番組単位の需要分析に向けた理論的検討を行いました。 当初の計画では地域別のケーブルテレビ加入者数やNHKの受信契約数、地域毎のブロードバンド放送を用いたアクセス層の需要分析を行いました。NHKの放送受信契約数やケーブルテレビ受信契約数に対するブロードバンド価格の影響をパネルデータによって分析した結果、放送サービスと固定ブロードバンドサービスはアクセス層においては代替財の関係にあり、ブロードバンド放送は受信料やケーブルテレビ契約料に対する競争圧力として機能しており、技術革新による放送市場と通信市場の融合が競争を促進してきたと考える事ができます。 他方、移動体通信の地域別の需要データが公表されていないため、移動体通信と放送のアクセス層の需要代替関係については今後の個標を利用した分析の課題となっています。 また、番組単位の需要分析を行うため、財の抱き合わせに関する理論研究について、特に放送番組との関連に着目しつつ、サーベイを実施しました。サーベイの結果、競争下における財のばら売りと抱き合わせ販売が同時に行われる混合抱き合わせには戦略の組み合わせが膨大になるため分析が困難である事に対し、Chu, Leslie, and Sorensen (2011)の提案するbundle-size pricing (BSP)という混合抱き合わせに近い枠組みを用いる事で分析が可能となり、Crawford and Yurukoglu (2012)は米放送市場にBSPを応用した研究を行っていること、Fox (2012)はPotential Gamesの枠組みを用いる事で多数の戦略が存在する場合の混合抱き合わせの分析を可能とする手法を提案していることを確認しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
放送市場の市場構造の変化を整理し、通信事業者・CATV会社などのバンドル型サービスの存在を踏まえた放送の需要関数を推定し、放送市場の厚生評価を行う事を目標としていました。 NHKより受信料の妥当性に関する検討会への参加を求められたことから、NHKより現状の放送市場について各種の情報提供を受ける事ができたため、放送市場の市場構造の把握を容易に行う事ができました。 また、企画段階のモデルとは異なるモデルとはなりましたが、予定通りに放送市場と通信市場の需要代替関係を示す事ができています。 これら作業が順調に進んだため、番組単位での需要分析に向けた先行研究のサーベイに着手する事ができ、当初の計画より早いペースで研究を進めることができています。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度の研究計画は、通信市場における動画配信サービスと、放送番組の需要代替性を分析します。 この分析を行うためには、番組単位での切り売りや番組をパッケージにした販売が行われている現状を踏まえ、混合抱き合わせを含めたモデルによる分析が必要である事が明らかになりました。混合抱き合わせの分析を行うためには理論的に考えなければならない戦略の組み合わせが飛躍的に拡大するため、既存研究は少ないものの、Chu, Leslie, and Sorensen (2011)の提案するbundle-size pricing (BSP)を利用したCrawford and Yurukoglu (2012)、Fox (2012)の提案するPotential Gamesの枠組みを利用したモデルなど、画期的な先行研究が存在している事が明らかになりました。 今後はこれらの枠組みを参考にしつつ、Webアンケートを通じて放送番組単位の需要データを入手し、番組単位での需要分析を行いたいと思います。また、番組単位の需要分析を踏まえ、消費者の放送と通信の全体としての需要代替性について検討を行い、放送と通信の間での好ましい周波数配分の形について考察を進めてゆきます。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
NHKより情報や関連資料の提供を受ける事ができたため、初年度の分析は期間・費用共に計画よりも低く押さえる事ができました。この費用は固定ブロードバンドや移動ブロードバンドを通じた動画配信サービスと放送需要の関係を分析するためのWebアンケートにおける標本数、設問数等の拡充に充て、より充実した分析を行う予定です。 25年度は主として先述のWeb調査の実施に費用を用いる予定です。
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