2012 Fiscal Year Research-status Report
地理的・技術的空間における動学的外部性の経路と範囲に関する実証研究
Project/Area Number |
24730231
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
河上 哲 近畿大学, 経済学部, 准教授 (60402674)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 動学的外部性 / 技術的近接性 / 探索的空間データ分析 / 産業集積 / 空間計量経済モデル |
Research Abstract |
研究初年度は、地域産業の持続的な成長と産業集積に伴う動学的外部性(知識のスピルオーバー効果)との関連を検証するための基礎的分析として、既に整備済みであった名古屋大都市圏における地域産業の従業者データを利用して探索的空間データ分析(Exploratory spatial data analysis)を行った。分析では、地域間の近接性が表現される地理的空間だけでなく、産業間の技術的連関(産業間リンケージ)の近接性が表現される技術的空間も考慮した。分析より、名古屋市域を中心に地域産業の負の成長クラスターが、また西三河地域を中心に地域産業の正の成長クラスターが、それぞれ形成されていることが判明した。また正の成長クラスターを構成する地域産業は、クラスター中心部から60分圏域では輸送用機械とそれに関連する各種製造業、卸売、対事業所サービスなどの多様な産業である一方、60分から120分圏域ではおおよそ輸送用機械製造業のみであった。分析結果は論文にまとめて国際学術誌に投稿し、現在査読審査中である。 上記の基礎的分析を踏まえ、名古屋大都市圏を対象として、地域産業の持続的な成長に寄与する産業集積の形態や企業の競争環境を、空間計量経済モデルにより検証した。分析より、輸送用機械製造業は、同一業種による産業集積と独占的な競争環境が成長に寄与することが判明した。輸送用機械と技術的連関の程度が大きい産業と小さい産業の成長については、ともに競争的な生産環境が寄与するものの、同一産業による集積と異業種産業による集積のどちらが寄与するかについては確かな結果が得られなかった。分析結果は論文にまとめ、国際学会において報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初に予定していた実証分析に用いるデータはおおむね整備済みである。また探索的空間データ分析による基礎的分析も順調に実施でき、次年度より空間計量経済モデルによる詳細な分析にとりかかることが可能となっている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
探索的空間データ分析による基礎的分析を踏まえ、次年度より空間計量経済モデルを利用し、地域産業の持続的な成長と産業集積に伴う動学的外部性との関連を詳細に分析していく。これまでの名古屋圏を対象とする研究において、比較的明快な分析結果が得られていることから、地域レベルで集計されたデータを利用した分析から、企業レベルのミクロデータを活用した分析への発展も考慮している。ミクロデータの利用については、経済産業省統計グループ企業統計室の協力を受け、『企業活動基本調査』の入手を現在進めているところである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
分析結果を地理情報システムで視覚的に表現するためのGISソフトウェア(ArcGIS)を購入する。地理情報システムの利用や大規模データサンプルによる空間計量経済モデルの解析に耐えうる計算処理能力の大きいパソコンを購入する。また、地域レベルで集計されたデータに加え、企業レベルのミクロデータを利用した分析に発展させることを考慮しており、データ整備補助作業のための謝金を支払う予定でいる。
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