2013 Fiscal Year Research-status Report
地理的・技術的空間における動学的外部性の経路と範囲に関する実証研究
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24730231
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
河上 哲 近畿大学, 経済学部, 准教授 (60402674)
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Keywords | 地域産業成長 / 動学的外部性 / 空間計量経済モデル / 探索的空間データ分析 / 成長クラスター |
Research Abstract |
地域産業の持続的な成長と産業集積に伴う動学的外部性(知識のスピルオーバー効果)との関連を検証するため、輸送用機械関連産業の集積が見られる名古屋大都市圏を対象として、地域産業の成長に寄与する産業集積の形態や企業の競争環境を、空間計量経済モデルにより詳細に検証した。この分析結果を、研究初年度に実施した探索的空間データ分析(Exploratory spatial data analysis)の分析結果と合わせて解釈を行うことにより、産業クラスター関連政策について、二次元空間上においてより具体的な政策示唆を導くことが可能となった。 分析結果より、輸送用機械製造業の成長には、Marshall-Arrow-Romer型の産業集積、すなわち同一業種による産業集積と独占的な競争環境が有意に寄与しており、この効果を享受する輸送用機械製造業は、西三河地域を中心として約120分圏域に広く分布している。西三河地域を中心に約60分の比較的狭い圏域では、輸送用機械に限らず製造業全般の成長に、それらと技術的に近接にある多様な産業の集積が寄与している。成長に寄与する多様な産業の中には、技術的に関連の深い製造業だけでなく、商業や対事業所サービス等の各種サービス業も含まれる。ただし、この圏域におけるサービス業の成長は、知識のスピルオーバーを源泉として内生的に達成されたものではなく、製造業の成長に伴う需要の増大を受けたものである。 以上の分析結果は論文にまとめ、国際学会において報告を行うとともに国際学術誌に投稿し、現在査読審査中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究年度2年目までに予定していた空間計量経済モデルを用いた実証分析も順調に実施でき、現時点での研究成果も論文にまとめ、学術誌に投稿することができた。次年度より、企業レベルのミクロデータを利用した分析にとりかかることが可能となっている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの名古屋大都市圏を対象とする研究においては、市区町村の地域レベルで集計されたデータにより、地域産業の雇用の成長と産業集積との関連について、比較的明快な分析結果を得ることができた。今後は地域産業の生産性と産業集積との関連を、企業レベルのミクロデータを活用して分析を発展させることを考慮している。ミクロデータの利用については、経済産業省統計グループ企業統計室の協力を受け、『企業活動基本調査』を活用する予定である。また、企業の生産性を導出する適切な手法について、現在検討しているところである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会の参加費及び海外旅費については、所属研究機関(近畿大学)で付与された研究渡航費で賄うことができたため。 経済産業省統計グループ企業統計室の協力により得られる『企業活動基本調査』を活用するとともに、企業間取引と知識のスピルオーバーとの関連を見るため、株式の所有構造を把握できるデータを購入する。企業レベルのミクロデータの整備に、補助作業のための謝金を支払う予定でいる。国際学会等で研究成果を報告するための参加費・旅費として使用する。
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