2012 Fiscal Year Research-status Report
社会制度下における社会観の形成と行動決定に関する実証研究
Project/Area Number |
24730236
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小暮 克夫 一橋大学, 経済研究所, 講師 (00610057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 経済発展 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1975年から1979年のポル・ポト政権下のカンボジアに着目し、この政権下で行われた社会制度の変革が人々の経済行動に与えた影響を研究することである。平成24年度は本プロジェクトの1年目にあたり、研究計画に基づいて、必要な統計データ、歴史資料の収集と整理、文献調査、そして具体的研究を進めた。その成果は、“Impacts of Institutional Changes in Cambodia under the Pol Pot Regime”(CEI Working Paper, 2012-13)にまとめられた。この論文では、ポル・ポト政権下で行われた強制結婚に着目し、強制結婚と普通結婚の親の子供への教育投資がどのように異なるかを検討している。この論文の重要な点は、両集団の教育投資の違いを定量的に明らかにし、さらにその違いをその背景にある社会制度や社会構造を踏まえて比較検討していることである。この研究を通じて、ポル・ポト政権下で形成された社会観が長期的にどのように人々の経済行動に影響を与えたかを考察した。 本プロジェクトは、平成24年6月29日、一橋大学で開催された「途上国における貧困削減と制度・市場・政策:比較経済発展論の試み(PRIMCED)研究会」で報告された。参加者から貴重なコメントを頂き研究の進展に大いに役立った。平成25年度は、国際学会で研究成果を報告することを予定している。他の専門家との意見交換を通じて本プロジェクトをさらに推進していきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
評価の理由として、必要な統計データと歴史資料を迅速に入手できている点が挙げられる。また、研究代表者が所属する一橋大学経済研究所や他大学の研究者から定期的に研究のフィードバックを得ることができている点も研究の進展に役立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の成果を土台として、引き続き、ポル・ポト政権下の社会制度が人々の経済行動に与えた影響を多角的に検討する。具体的には、制度の永続性と密接に関連すると思われるクメール・ルージュによる暴力の恐怖の代理指標として、キリングサイトの遺骨数を用いて、制度、暴力、社会構造が人々の経済行動に与える影響をさらに検討する。本研究を進める上で、国内・海外の研究会・学会等に参加し、多数の研究者との意見交換を通じて、研究に対するフィードバックを求めていく。また、8月に3週間ほどカンボジアに調査研究に出張し、本研究を進める上で必要となる統計データと歴史資料の収集と関係者との意見交換を行うことを予定している。これらの活動を通じて、着実に研究を推進していきたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度に予定していた2週間のカンボジアへの調査研究については、必要な歴史資料がほとんど国内で入手できたため、調査研究出張を行う必要がなくなった。そのため、この出張に係わる外国旅費とその際に発生する予定だった人件費について未使用額が発生した。さらに物品費、その他経費についても効率的な使用を心がけたところ未使用額が発生した。これらの未使用額は、平成25年度の研究費とあわせて、主に、国際学会への参加旅費、カンボジアへの調査研究旅費に使用する。特に、海外調査研究については、統計データの収集に関して、関係者と協議するための十分な時間を確保するため、当初2週間の予定であったところを3週間の調査研究を行うことを予定している。また、研究を進める上で必要な統計データ、歴史図書、専門書の購入、そして論文の校閲などにも研究費を使用することを予定している。
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Research Products
(1 results)