2013 Fiscal Year Research-status Report
社会制度下における社会観の形成と行動決定に関する実証研究
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24730236
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小暮 克夫 一橋大学, 経済研究所, 講師 (00610057)
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Keywords | 経済発展 / 制度 |
Research Abstract |
本研究の目的は、1975年~1979年のポル・ポト政権下のカンボジアに着目し、この政権下で行われた社会制度の変革が人々の経済行動に与えた影響を研究することである。平成25年度は、本プロジェクトの2年目にあたり、平成24年度に得られた研究成果を踏まえて、カンボジア大虐殺の長期的影響を検討した。具体的には、ポル・ポト政権下で第一子を持った夫婦と政権崩壊後に第一子を持った夫婦に着目し、クメール・ルージュによる大量虐殺が両夫婦の子供への教育投資に与えた影響を定量的に評価した。その結果、虐殺は前者の夫婦の教育投資に負の影響を与えたが、後者の夫婦ではそのような影響が少ないことが分かった。背景にある制度を踏まえると、これらの結果は、当時の社会規範の影響を強く受けている前者の夫婦では、虐殺が当時の社会規範に従うように動機づけるが、その影響が弱い後者の夫婦の教育投資は虐殺の影響を受けにくい、と解釈することができる。本研究は、制度と暴力がどのように個人の経済行動に影響を及ぼすかを検討した学術的意義のある研究であり、かつ、ポル・ポト政権の歴史的惨事の社会経済的帰結の一端を明らかにした政策的含意を持つ研究でもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属する一橋大学経済研究所や他大学の研究者から定期的に研究のフィードバックを得ることができてきている点が研究の進展に大いに役立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、ポル・ポト政権下の制度変更が職業選択に与えた影響に関する研究を行うことを予定していたが、平成25年度に行った研究課題から派生した新たな研究課題に取り組む。具体的には、カンボジア大虐殺の長期的影響を検証するため、新たな識別戦略を考案した。この識別戦略は、汎用性があると考えるので、その一般化を試みる。この研究成果を論文にまとめることを予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、ほぼ計画通り、研究費を使用したが、昨年度未使用額の一部がまだ残っているため次年度使用額が発生した。 次年度使用額は、主に、研究成果を発表するための国際学会への参加旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)