2012 Fiscal Year Research-status Report
なぜ流動性の罠が生じるのか?その原因と予防、対処法に関する研究
Project/Area Number |
24730241
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
荒戸 寛樹 信州大学, 経済学部, 講師 (90583518)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金融政策 / 流動性の罠 / 情報公開政策 |
Research Abstract |
1.研究実施計画の『論文4:金融市場の不完全性を導入.金融危機と流動性の罠の関係性を分析』について研究が進行した。具体的には以下のとおりである。 金融市場の不完全性が流動性の罠の原因となるか否かという問題を考察するため、借入-担保比率の変化を導入したマクロ経済モデルを構築し、分析を行った。担保として土地がモデルに組み込まれていることが大きな特徴である。分析の結果、金融市場で借入-担保比率が一時的に上昇するようなショックが存在する際、借入-担保比率が元に戻る時に不況が発生するメカニズムを解明した。一時的な正の金融ショックによってその後の不況を説明したことが本研究の貢献である。このことから、金融市場のショックは自然利子率を低下させ、流動性の罠を生じさせる一つの要因であることがわかった。この結果は現在論文執筆中であり、本課題の研究期間中に発表する予定である。 2.研究実施計画の『論文5:情報の不完備性を導入.情報公開と流動性の罠の関係性を分析.』について研究が進行した。具体的には以下のとおりである。 政府の情報公開政策に関する研究について、政府が経済内の一部の主体のみに情報を公開するための方法についての分析を行った。既存研究では「政府がどれだけの割合の経済主体に情報を公開するか選択することが可能である」という前提の下で研究が行われてきたが、我々の研究では、その割合を政府がコントロールすることは必ずしも容易ではなく、単純な方法では不可能であることを理論的に示した。この研究は中央銀行の情報公開政策について示唆を与えるものであり、本研究課題の研究の基礎にもなる研究である。本課題の研究期間中に学会発表が決定しており、論文も現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画において執筆を計画した5本の論文のうち、『論文4:金融市場の不完全性を導入.金融危機と流動性の罠の関係性を分析』、『論文5:情報の不完備性を導入.情報公開と流動性の罠の関係性を分析』について研究が進み、査読付き国際雑誌への投稿に向けた論文執筆も順調し進んでいる。上述の2本の論文は計画上は平成25年度、26年度に執筆予定としており、計画した5本の論文の執筆順序に変更が発生した。しかし、執筆本数としては予定通りであり、本課題の研究期間中には全体としても予定通りの成果を達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果を論文・学会発表等で公表していき、査読付き国際雑誌に投稿する。さらに、当初の計画では平成24年度に執筆予定であった、研究実施計画の『論文1: シンプルな基本モデルを構築.経済変動,経済成長,自然利子率の関係の理論分析.』および『論文2:medium scale DSGE による各国の流動性の罠の原因の検証.』に着手し、この2本についても査読付き国際雑誌への投稿に向けて研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は主に研究打合せ及び国内学会参加旅費に使用し、当初予定していた海外学会参加旅費が不要になったため次年度使用額が生じた。次年度は国際雑誌への投稿と研究発表の回数が増えると予想されるので、25年度請求分と合わせた次年度の研究費は主に国内旅費・海外旅費および英文校正費として使用する。
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Research Products
(4 results)