2012 Fiscal Year Research-status Report
土地税制改革が都市の持続可能性に与える政策効果に関する研究
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24730248
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
川勝 健志 京都府立大学, 公共政策学部, 准教授 (20411118)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 持続可能な都市発展 / 持続可能な土地利用 / 地方環境税 / 地価税 / 土地税制改革 / 国際情報交換 / アメリカ:イギリス |
Research Abstract |
本年度の成果は、本研究の第1の目標として掲げた、地価税の導入が実際に自然資源としての土地の機能にネガティブな影響を及ぼすのかを実証するための準備作業として、以下の課題に取り組んだことである。 第1は、実証に必要な情報や関連文献・資料を検索・入手し、海外調査の準備資料を作成したことである。本研究に必要な国内外の書籍や論文、調査対象となる自治体・研究機関の報告書や統計資料などのうち、国内で入手可能なものを検索・購読するとともに、その内容を海外調査に向けて整理検討した。その成果を研究ノート・メモとして作成しておくことは、現地での調査研究をより効率的かつ実効性のあるものにするという意味で重要である。 第2に、本年度の9月20日~22日にカナダのブリティッシュ・コロンビア州で開催された「第14回環境税国際会議(GCET14)」に参加し、本研究との関連が深い海外(特にアメリカ)の研究者と交流を行ったことである。本研究テーマに関連する研究を行っている研究者やすでに交流のある研究者を中心に意見交換を行うことで、現地での調査研究や今後の研究の方向性等について、貴重な情報を入手することができた。また、本会議は世界中から環境税に関するあらゆる分野の専門家が集まり、研究交流できる貴重な場であるため、今年度参加したことは、今後のネットワークづくりという意味でも有意義であった。 第3に、論文「持続可能な土地利用と土地税制改革-共有資源税としての地価税を中心に-」を執筆し、学術雑誌『京都府立大学学術報告 公共政策』に寄稿したことである。本論文は、2007年に日本財政学会で報告した論文をベースとしているが、上記第1及び第2点の成果を一部踏まえて加筆補正して取りまとめたものである。同論文は、次年度に向けた課題を明確にという意味でも重要な成果物である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、実証研究を行うための準備作業として、国内外で入手可能な関連文献・資料の検索・収集し、包括的なサーベイを行ったが、研究目的の第1として掲げた「地価税の導入が実際に自然資源としての土地の機能にネガティブな影響を及ぼすのかどうか」について検討した先行研究を見つけることはできなかった。そのことをあらためて確認できたこと自体は成果ともいえるが、言い換えれば、当該目的を達成するためには、本研究で予定しているアメリカの各都市や大学・研究機関でヒアリング調査や資料収集を行うことが決定的に重要になる。 ところが今年度は、本研究テーマに関する情報収集を重視して、カナダで開催された「環境税国際会議」に参加したこともあり、今年度末に予定していたアメリカへの調査訪問を実施することができなかった。具体的には、(1)ペンシルヴァニア州のピッツバーグ市やハリスバーグ市の税務及び環境担当部局において、SRTの制度運営や政策効果に関する文献・資料の収集及びヒアリング調査を実施すること、(2)メリーランド大学やハートフォード大学、リンカー土地政策研究所において、研究代表者のこれまでの研究成果とペンシルヴァニア州での調査内容をもとに、本研究との関連が深い研究者との交流を行うことができず、上述の実証研究を行える材料が必ずしも十分得られていない。 したがって、研究目的の達成度は、当初の計画よりやや遅れてはいるが、今年度に実施した関連文献・資料の収集とそれに基づく包括的なサーベイや国際会議で各国研究者から得た情報は、次年度にあらためて行う予定のアメリカでの現地調査の準備作業として極めて有用であり、まして研究目的の達成が危ぶまれるほどのものではない。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は当初から研究計画に遅れが生じた場合に備えて、本年度の活動の一部を次年度に持ち越すことも視野に入れ、次年度の研究計画(特に研究内容及び調査日程等について)を少し余裕をもった形で作成していた。特にアメリカへの調査訪問については、研究の進捗状況や計画作成後に得られた情報に基づいて、調査対象とする都市や訪問する大学・研究機関、あるいは研究者について変更の必要があると判断した場合には、柔軟に変更する予定である。 次年度は本研究の第2の目標として掲げた「アメリカの諸都市で「持続可能な土地利用の促進」を目的に導入されている地価税あるいはSRT(Split Rate Tax)を日本の固定資産税に適用した場合に、浮かび上がってくる固有の意義と課題を抽出する」ために、関連文献の研究に加えて、以下のような方策に取り組む予定である。 第1に、国内の研究活動での報告である。今年度に収集・整理した情報や資料とその成果の一部を用いて作成した論文に基づいて、本研究の中間報告として所属する研究会や同研究会が主催するワークショップで報告する予定である。 第2に、日本の土地政策に関するこれまでの研究成果を歴史・理論政策の各観点から再整理・検討する上で、有益なアドバイスや示唆を与えてくれる国内の専門家を訪問し、意見交換を行うことである。具体的には、土地税制に関する代表的な研究者であり、研究代表者が所属する大学の同僚でもある川瀬光義教授や、研究代表者が現在委員長を務めている「堺市公有財産有効活用検討懇話会」の委員である不動産鑑定士の大島大容氏に研究上の助言をお願いする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、本年末時点で比較的少額であった残金を無理に年度内に使用するよりも、むしろ次年度に使用した方がより有効に活用できると判断したためである。したがって、当該研究費は次年度の旅費あるいは物品費に補填して使用する予定である。
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