2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730250
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Research Institution | Sapporo University |
Principal Investigator |
武者 加苗 札幌大学, 経済学部, 准教授 (60614980)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 台湾 |
Research Abstract |
生活経済圏の拡大や交通網の発達によって、従来都道府県内で完結していたような経済活動の範囲が県外、さらには国外へと拡大している。しかし、既存の経済統計は都道府県単位で構築されており、その枠を超えた経済活動が把握できる統計は少ない。地域間取引の現状を捉える統計には地域間産業連関表があるが、その多くは単一県とそれ以外の地域との2地域間表である。また、地域と国外との経済取引を把握するには貿易統計が有用だが、港別集計であり、当該地域の需要や生産を反映したものとはなっていない。 平成24年度はこの状況を考慮したうえで、前段の問題については全国を9地域に分割した経済産業省地域間産業連関表を用いて、地域ブロック間の経済取引を整理し、各地域の産業別の移出入の特色および産業構造を明らかにした。後段の問題については、わが国と地理的に近く交易量も多い東アジア諸国との関係を産業別に分析することとした。ファクトファインディングとして、日本の県と同規模の経済規模を持つ台湾を取り上げ、コンテナ貨物及び航空貨物統計を利用して台湾との地域間表を作成した。なお、日本側の分析対象地域には関西地域を取り上げた。関東ブロックを利用しなかった理由は、経済産業省の定義による「関東地域」が1都10県と欧州の中規模国と同程度の経済規模を持ち、地域分析の観点からは適切ではないと判断したためである。 以上の作業の結果、日本の9地域ブロックおよび一部の府県間の移出入に関するデータベースが構築された。加えて、日本の地域ブロックと東アジア諸国との交易関係を産業別に明らかにするための手法を開発することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に実施した研究は、当初予定していた計画から多少の変更はあるものの、分析の基礎となるデータベースの整備と地域間産業連関表の構築は予定どおり進展しており、平成25年度の研究に支障はないと評価できる。 平成24年度は主に日本の地域ブロック間の移出入に関するデータベース構築を行った。特に、一次資料に何を利用するかについては先行研究の整理および有識者へのヒアリング等を通じて慎重に検討した。その結果、当初予定していた地域ブロック内の府県間の移出入のデータベース構築に先行して、地域ブロックごとの移出入のデータを整備することで最終目的の広域化の比較分析を実施するための大局観をつかむこととした。 また、国内経済の広域化を空間距離で定義すると、わが国の場合は起点から終点までの距離が隣国の東アジア諸国を含む場合があることを考慮し、国内にとどまらない「地域」を分析対象に含めるよう変更した。平成24年度は先行して台湾地域を分析対象に含めることとし、台湾を連結した地域間産業連関表を試作した。 分析の途中経過は学会で報告し、コメンテーターおよびフロアから移入と移出の重複(交差輸送)の処理手法と分析結果への影響について指摘を受けた。それを考慮した分析結果を論文にまとめ投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は研究の深化と成果の外部発信に重点を置く。平成24年度に構築した移出入のデータベースを利用して、海外(特に東アジア諸国)を含む広域地域圏連携モデルを構築する。完成したモデルはテストシミュレーションを行う。全県で一律に需要増が得られた場合、また1府県づつ需要増が得られた場合とケース分けを行い、結果を比較検討し、モデルの微調整を行う。 次に、複数の府県で同じ政策を実施した場合、実施区域とそれ以外の区域の各産業にどの程度の影響が出るかを定量的に推計する。広域連携では公的部門から民間部門への移転が見込まれるため、産業構造に現れる変化について計測する。広域連携を実施しないケースも推計し、両者の結果を比較検討する。また、筆者の在住地である北海道地域に関わるシミュレーションを追加する。 成果の外部発信については、通常の研究会・学会報告を行い結果を論文化するだけでなく、一般向けへの発信を予定している。平成25年5月時点で、北海道放送による「平成25年度道民カレッジ『ほっかいどう学』大学放送講座」の枠(29分間)を得られることが確定しており、これを利用して一般向けに研究成果を発信する(9月収録、10月放映予定)。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は研究成果を外部に向けて発信することに重点を置く。そのための学会・研究会発表に必要な機材および旅費への支出を行う。新たに購入する機材として、薄型プロジェクタへを予定しており、その支出を10万円と見積もっている。 海外での報告は、the Regional Science Association International(RSAI)Singaporeでの報告を予定しており、約15万円の支出が見込まれる。国内で学会される学会での報告は宮城大学で開催される計画行政学会、中京大学で開催される環太平洋産業連関分析学会のいずれかでの報告を予定しており、それぞれ5~6万円程度の支出が見込まれる。加えて、学会報告後の学会誌投稿料および英文校正には10万円程度を予定している。 平成24年度から引き続いての調査・ヒアリングは、日本国内4~5か所程度を予定している。それぞれ5~6万円程度の支出が見込まれ、調査旅費の総額として30万円を予定している。またそれに伴う資料整理をアルバイト1名に依頼しており、その人件費として8万円を見込んでいる。残りの2万円はインクトナー、印刷用紙、文房具などの消耗品費にあてる。
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Research Products
(2 results)