2012 Fiscal Year Research-status Report
新しい企業成長の源泉‐企業データを用いた実証研究‐
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24730252
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
滝澤 美帆 東洋大学, 経済学部, 准教授 (50509247)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 無形資産 / IPO / ベンチャーキャピタル |
Research Abstract |
企業の生産要素である労働や有形の資本の他に、『無形資産』が企業成長に果たす役割について企業財務データを用いた分析を行った。また、新規企業の参入が経済を活性化させると指摘されているが、企業が成長し、IPO(新規株式公開)を行うまでのベンチャーキャピタルなど資金出資者が、IPOまでの期間に与える影響について、最新の統計的手法を用いた分析を試みた。 無形資産に関する研究では、研究開発投資のみではなく、企業別の無形資産をソフトウェア、広告宣伝、人的資本、組織資本の5つの項目別に、国際的にも比較可能な形で包括的に計測した。その結果、以下のことが明らかとなった。通常の(有形資産のみの)トービンのQは1を超えるが、無形資産を分母に含んだトービンのQは1に限りなく近くなった。特にIT関連産業は無形資産を含んだ場合のトービンのQでも平均して1を超えていた。そのため、IT関連産業はより投資を拡大する余地があると考えられる。無形資産の多い企業ほど企業価値が高い。IT関連産業に属する企業の方が、無形資産の蓄積が大きく、またそれが企業価値に寄与している。この分析の結果から、政府は、IT関連産業の無形資産への投資を促進させるような成長戦略を取るべきであるとの主張ができる。 IPOに関する研究では、IPOのダイナミクスを、IPO前の期間におけるベンチャーキャピタル(VC)の関与に注目しながら実証的に分析した。その結果、IPOのハザードが、シンジケーションに含まれるVC数が増加する場合に加えて、VCタイプ数が増加する場合において上昇することを確認した。特に後者の結果は、多様なVC間に案件のスクリーニングや投資後のコーチングといった点に関する補完性が存在していることを示唆している。 以上の研究成果は、国際学会や国内の学会等で報告をし、ディスカッションペーパーとして発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画・方法に記載した、企業別無形資産の研究、及びベンチャーキャピタルがIPOまでの期間に与える研究についての、大容量のデータベースの構築作業も終了し、企業ごとの無形資産計測も終了した。加えて、無形資産投資が企業価値に与える影響の分析も終了し、論文としてまとめ上げた。 平成25年度以降予定していた、ベンチャーキャピタルがIPOまでの期間に与える影響についての推計も終了し、ディスカッションペーパー等で発表した。そのため、当初の計画以上に、研究が順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に行った企業別無形資産に関する研究をまとめ上げ、海外専門誌への投稿を試みる。さらに、構築したデータベースを基に、関連した発展研究を行う。具体的には、企業別無形資産を日本のほか、韓国や中国、米国などその他の国々でも計測し、国際比較を行う。また、無形資産とトービンのQを説明変数とする通常の設備投資関数を有形の資産のみの場合と無形資産を含む場合の二通りで推計し、無形資産への投資と資金制約の関係を明らかにする。 IPOに関する研究も引き続き、投稿作業等を行うが、加えて、株式非公開化の分析を試みるために必要なデータベースの整備作業にも着手する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大容量データベースの整備、処理に必要な、高性能のノートパソコンを購入する。また、国際学会での発表を予定しているため、旅費に研究費を使用する。 英文での論文執筆後の校閲費用にも可能であれば研究費を使用したい。加えて、統計分析ソフトであるSTATAの最新版も購入したい。
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