2013 Fiscal Year Research-status Report
人口減少社会における職種からみた女性の継続就業と再就職に関する実証分析
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24730258
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
野崎 華世 慶應義塾大学, 商学研究科, 特任講師 (40588927)
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Keywords | 経済政策 / 職種 / 女性労働 / 労働経済学 |
Research Abstract |
本年度は、出産前後の女性の継続就業と再就職について職種との関係を明らかにする分析を行ってきた。2011年10月、2010年の日本の完結出生数(夫婦の最終的な出生子ども数)が1.96人と1940年から初めて2人を下回り、その後も少子化が進行している。少子化が進行すると、生産年齢人口が減少し労働力が不足する。労働力不足を補うための主な解決策の一つとして女性労働の活用があげられるが、本研究では、特に出産後の女性の継続就業について、さらに出産後に離職した女性の再就職について、職業の観点から分析を行っている。JGSS-2009LCSを用いた分析結果では、専門・管理職、製造労務職の女性が、事務職よりも第一子出産後も就業を継続する確率が高いことが分かった。また、同じ職業経験が長いほど第一子出産後の継続就業を促すことも確認された。一方で、第二子出産後の就業継続は、どの職種でも有意な差はなかった。職業経験年数は、正規雇用のみの場合、職業経験年数が長いほど第二子出産後も継続就業する確率が上がることが分かった。さらに、出産後に離職した女性の再就職に関する分析では、出産前にサービス職であった女性が事務職であった女性よりも再就職する確率が低いことが分かった。一方で、出産前の職業経験年数は再就職に有意ではなく、蓄積された人的資本が活かされていない可能性を示した。内閣府「平成24年度版 子ども・育て白書」でも、第一子出産前後の女性継続就業率を平成24年の45%から平成29年には55%へ増加させる数値目標が紹介されている。本分析では、専門・管理職および製造労務職以外の女性が育児資源利用率の低さも示し、人的資本を蓄積し辛い職種で女性は継続就業をし辛い状況にあることを示した。しかし、本分析は、個人の選好等の影響を十分に考慮できていない可能性がある。今後、この点を考慮した分析を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、マイクロデータを用いた出産前後の女性の継続就業と再就職について職種との関係を明らかにする分析を行ってきた。英語論文にまとめThe 12th International Conference of the Japan Economic Policy Associationで学会報告を行い、多くの有用な意見をいただいた。それに基づき改訂を行った分析を今後も報告予定である。しかし、現段階では、査読誌掲載には至っていない。そのため、おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、政府統計を利用した分析を進めていきたい。現在、政府統計の利用の申請書作業を行っているが、データ提供にまで至っていない。これらの問題に対応するために、これまで政府統計を利用してきた研究者に適宜助言を受けて作業を進めたい。さらに、もしデータを利用できなかった場合を考え、代替できるデータも探していく。引き続きJGSS-2009LCS(Life Course Survey)を用いた職種と子ども数に関する分析も行っていく。研究に用いる分析手法に関しても、適宜助言を受けていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予想していたよりも少ない金額で物品が購入できたこと、データハンドリングの補助を依頼できる人物の選定が困難だったため、その予算が次年度に繰り越されている。 次年度も研究費を活かした研究を行っていく予定である。具体的には、労働経済学・計量経済学等の関連図書の購入、統計分析ソフトの購入を行っていく。さらには、国内外の学会報告や英文校閲費に使用していく。
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