2015 Fiscal Year Research-status Report
マイクロデータを用いた再分配政策の評価に関する研究
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24730263
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
中田 大悟 創価大学, 経済学部, 准教授 (10415870)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 寄付行動 / ボランティア / 社会保険料負担 / パネルデータ / 投資行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、次のふたつの研究に重点的に取り組んだ。 まず、中高齢者を対象としたパネル調査である「くらしと健康の調査(JSTAR)」を用いて、東日本大震災前後において寄付行動にどのような変化が生じたかを明らかにするマイクロ実証分析である。本研究においては、各個人のフロー所得、資産、家族状況、健康状況、政治的志向、社会参加状況が寄付行動のインテンシブマージン、およびエクステンシブマージンにどのような影響を与えているのか、という点について分析を行ったが、特に、社会参加行動が寄付行動に及ぼす内生性を考慮して、HeckitモデルおよびIV-Heckitモデルを用いて分析を行った。これにより、得られた主要な結論は、(1)平時(非災害時)においては資産ストックの多寡が寄付行動に影響を与えるが、(2)災害時にはフロー所得の多寡が重要な決定要因となること、(3)各個人の主観的健康状態の悪化と政府の役割に対する志向の強さは寄付行動と金額に負の影響をあたえること、さらには、(4)内生性を考慮しても日常からの社会参加行動は寄付行動を強く促進すること、などである。 第二に、企業活動基本調査(経済産業省)の個票データと健康保険組合連合会が公開している各健保組合の財政データをマッチングして、企業の健康保険料負担が、設備・研究開発・対外直接投資にどのような影響を与えているかを実証的に分析した。分析の結果、健康保険料負担の増加は、(1)企業の国内投資を一定程度抑制させた可能性がある、(2)研究開発投資には大きな影響は与えていない、(3)海外進出を行うかどうかの意思決定には影響を与えていないものの、既に海外進出を行っている企業の対外直接投資を増加させた可能性がある、といった結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
所属機関の移籍により、研究環境の整備に幾分の時間を要したため、研究の進展に遅れが生じた。また、分析に使用している「くらしと健康の調査」および「企業活動基本調査」の整理に、想定以上の作業量が生じ、それによっても分析の実施に遅れが生じた。 今年度は、「くらしと健康の調査」の最新年度調査分についてクのリーニング作業が完了し、分析に利用可能となる予定であり、それにより既存の研究にもより改善が図られるものと考えられる。企業活動基本調査を用いた研究については、データの利用期間のうちに分析を完了させることができたため、学術雑誌への掲載へ向けて着実なステップを踏んでいるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
「企業活動基本調査」を用いた社会保険料負担が企業行動、特に投資行動に与える影響に関する実施用分析については、学術雑誌の査読プロセスに乗っているところであり、その進展を着実になものにしていく。 さらに、これまで実施してきた、生活保護制度の利用行動、寄付行動の計量経済分析については、新規データの追加により分析の精緻化を図り、早期の学術雑誌への掲載を目指す。 また今年度は、残された課題である遺産行動の決定要因、同居選択行動の決定要因に関する実証分析を進め、プロジェクト全体の達成度向上を図る。
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Causes of Carryover |
所属機関の移籍により、研究活動の進展について当初の想定にくらべて変更が生じ、次年度の研究活動に繰り延べする必要が生じたため。また、旅費についても、首都圏近郊での学会参加が主となったため、残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、学会参加等への旅費、ソフトウェアの更新費として研究費を使用する予定である。
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