2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730266
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中田 豪 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70509439)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 公的債務 / 預金取り付け |
Research Abstract |
本研究では、公的債務危機のもとで複数の銀行が預金取り付けにあう理論的枠組みを構築し、銀行危機と公的債務危機がどのようにして互いに影響しているのか、更にいかにして銀行危機が伝染するのかを分析した。より具体的には、すべての銀行がその預金をソブリン債に投資しているモデルを構築した。もし、ある銀行において預金取り付けが起これば、当該の銀行は預金の引き出しに対応するべくソブリン債を政府のもとへ行き換金する。もし政府が十分な税収を得ることができなければ、ソブリン債の償還に伴って政府がデフォルトを起こす危険が高まる。結果として、同じソブリン債に投資している別の銀行において、政府がデフォルトを起こすと預金者に対して返済される額が少なくなり得る。従って、ある銀行で預金が引き出されれば政府がデフォルトを起こす見込みが高まり、その結果、別の銀行においても預金が早々に引き出され得る。この別の銀行における引き出しは、ソブリン債の償還をさらにもたらし、政府がデフォルトに陥る危険はますます高まる。これらの過程は延々と続く。 このような枠組みの中で政府による最後の貸し手(LLR)機能の効果について検証した。LLRは、支払い可能であるが非流動的な銀行における預金取り付けを防ぐことができない可能性がある。さらに悪いことに、そのような支払い可能であるが非流動的な銀行に対する公的資金の注入は、支払い可能であり尚且つ流動的な銀行までをも預金取り付けに陥れさせてしまうことがあることを示した。 これらの結果は、近年のヨーロッパにおいてみられるような金融危機を考察するにあって有益な示唆を与えるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資産価格を通じた金融危機のモデルを構築し、政策を導き出すという目的は達成された。また、その研究成果は論文にまとめられ、予定よりも早く学会において発表された。 public informationを導入するという分析手法は採用しなかったという点において計画が変更されたものの、得られた結果は当初に期待されていたものから大きく乖離することはなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
政策含意についてより深く考察する。より具体的には、他国への金融危機の伝染を扱い、国際間の資金の融通が危機を防止できるかについての分析をより詳細に行う。 今年度は、まとめた論文をEconometric Societyの欧州会合において発表する(発表予定論文は審査に通過している)。最終的には、学術誌へ投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関連する知見を得るために研究会におもむく。次年度の研究費の一部は、そのための旅費にあてる。また、関連書籍・資料を購入するためにも使用する。さらに、論文の英語を校正するべく業者に依頼する予定であるが、その費用にあてる。
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