2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730269
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
敦賀 貴之 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (40511720)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金融危機 / 流動性 / 満期変換 / 信用外部性 / 金融規制 / ベイルアウト / マクロ・プルーデンス政策 |
Research Abstract |
平成24年度は、もっとも基礎となる金融危機の発生メカニズムはどんなものか、という最初の課題に取り組んだ。具体的には、すでに公表していた論文、“Bank Overleverage and Macroeconomic Fragility”(共著)に多数の新しい分析を加えて、京都大学経済学研究科附属プロジェクトセンターのディスカッションペーパーに再公表した。この論文では、経済政策の観点から、銀行資本規制が金融危機発生確率をどの程度低下させることができるのか、2007-08年の金融危機以前に先進国で観察された低金利政策は金融危機の発生確率を高めた可能性があること等を明らかにした。 次に、これまでの金融危機に関する経済モデルの研究成果と当科研における研究成果の違い等を明らかにするため、日本語でのサーベイ論文を執筆した。この論文は、「銀行理論と金融危機-マクロ経済学の視点から」として雑誌『金融研究』にまとめている。 最後に、2つ目の研究課題として、金融危機に対する最適なマクロ・プルーデンス政策(経済危機を予防、ないしは緩和する政策)とベイルアウト政策(経済危機発生後に経済を改善させる政策)の比較を行った。この論文は、“Managing Financial Crises: Lean or Clean” (共著)として、日本銀行金融研究所のディスカッションペーパーシリーズで公表している。この論文では、既存の(銀行部門を含まない)金融危機のモデルを用いて、マクロ・プルーデンス政策とベイルアウト政策の比較を行った。具体的には、どのような状況でこれらの政策が経済にとって望ましいのかを明らかにした。理論的には、マクロ・プルーデンス政策対比、ベイルアウト政策はより望ましいパフォーマンスを示すことができるものの、現実的な観点からは必ずしも良好なパフォーマンスを示すとは限らないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点で、3本の論文を公表している。経済学の分野ではおおむね良好なペースでの研究成果といえる。英語論文2編のうち、"Bank Overleverage and Macroeconomic Fragility"については、トルコ中央銀行主催の国際学会(Financial and Macroeconomic Stability: Challenges Ahead)、エコノメトリックス・ソサエティの欧州部会、日本経済学会、米国で行われたMidwest Macro Meetings等、いくつかの学会で報告したが、優れた査読付き雑誌に掲載が認められていない段階にあり、引き続き投稿を行い、必要に応じて論文の修正を施している。他方、"Managing Financial Crises: Lean or Clean?"については、依然として、改善の余地を残している段階であり、論文の改訂を経てから学術雑誌への投稿に向けた活動が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、研究計画に沿って研究を遂行する。研究成果の公表については、とくに"Managing Financial Crises: Lean or Clean?"について、いくつかの国内外の学会やセミナーで報告を行う。現段階で予定されているものとしては、4月に開催されるオーストラリア国立大学での18th Australasian Macroeconomic Workshopで報告、追ってニュージーランドに渡航し、ビクトリア大学ウェリントン、およびニュージーランド中央銀行にて、研究報告を行う。さらに、韓国で行われる国際学会にも研究報告を行う予定。これらの学会で得たコメントをもとに、上記論文の修正、かつ新しい研究の推進を進める。なお、"Bank overleverage and Macroecomic Fragility"については、学術雑誌への掲載許可まで達していないため、状況に応じて論文の改訂・再編集の作業も随時進める必要がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究の共同研究者(日本銀行)の一人が異動となり、京都-東京の打ち合わせが予定よりも1回分少なくなってしまったため、使用計画に遅れがあったが、適宜、打ち合わせ回数を増やすことにより、対応する。
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