2013 Fiscal Year Research-status Report
低金利期間における金融機関のリスクテイク行動:個別金融機関および地域における相違
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24730270
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 仁 札幌学院大学, 経済学部, 准教授 (10545057)
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Keywords | リスクテイク / 低金利政策 / 金融政策 / 銀行 |
Research Abstract |
本研究の目的は,日本の低金利政策期間における金融機関のリスクテイク行動の詳細を実証的に明らかにすることである.株式・債券など貸出以外のリスク資産についても包括的に検証することによって,金融機関のリスクテイク行動の全貌を明らかにする. 前年度に引き続き,国内の銀行財務データを用いて,1999年に開始されたゼロ金利政策以降の低金利政策期間における実証分析を行った.国内銀行として集計されたマクロデータによる分析ではなく,個別銀行の財務データであるミクロデータを使用することによって,リスクテイク行動が個別金融機関によってどのように異なるのかを検証した.リスクテイク行動を表す指標としては,前年度と同様に銀行のバランスシートから計算される様々な指標を考慮した.さらに,ファイナンス分野でよく使用されるリスク指標についても考慮した. さらに,銀行のリスクテイク行動が地域(都道府県)でどのように異なるのかを検証した.個別金融機関が有する固有効果をコントロールした上で,金融機関が属する地域によってどのように異なるのかを検証した.都道府県が有するその他の固有効果をコントロールした上で,人口・生産力・地価などの地域別の特徴によって銀行のリスクテイク行動が異なることが部分的に確認された. 本研究の意義としては,低金利政策期間において,どのような金融機関がどのようにリスクテイク行動をとり,その結果としてそれらの金融機関が属する地域に対してどのような影響を与えたのかを明らかにできることである.この分析を通して,全世界的に波及している低金利政策についてのインプリケーションを考察することができる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大枠の実証分析に関しては,概ね当初計画通りに進行している.ただし,当初の計画においては分析対象の金融機関として,銀行の他に信用金庫,信用組合,保険会社を加えて分析することを計画していたが,期待していたデータセットが入手できなかったために銀行以外の金融機関については分析対象から除外せざるを得なかった.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの実証分析結果を整理し,低金利政策が金融政策波及経路に与える影響を考察する.日本における低金利政策であるゼロ金利政策や量的緩和政策がどのような経路で実体経済に波及していくのかという点に関して,いまだコンセンサスは形成されていない.低金利政策によって金融機関がリスクテイク行動を変化させた結果として,それらの効果が実体経済に波及しくいく金融政策経路は,欧米の先行研究ではリスクテイク経路と呼ばれている.このような金融政策波及経路が日本の低金利政策期間において存在していたかどうかを検証する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
信用金庫など銀行以外の金融機関のデータセットについて,データ購入のための費用とデータ整理のためのアルバイト雇用費用を計上していたが,期待していたデータセットが購入できなかったために当該予算を執行できなかった. 「計量経済学,マクロ経済学,金融論」関連図書,成果発表のための旅費,英語論文の校閲,成果発表のための投稿料,その他消耗品等に使用を予定している.
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Research Products
(1 results)