2014 Fiscal Year Annual Research Report
低金利期間における金融機関のリスクテイク行動:個別金融機関および地域における相違
Project/Area Number |
24730270
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
井上 仁 札幌学院大学, 経済学部, 准教授 (10545057)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 銀行 / リスクテイク / 貸出 / 自己資本比率 / 不良債権比率 / 地域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,日本の低金利期間における金融機関のリスクテイク行動の詳細を実証的に明らかにすることである.最終年度である平成26年度では,金融機関のリスクテイク行動として貸出行動を詳細に分析することに注力した.実証分析に当たっては,マルチレベルモデル(階層モデル)に該当するデータセットを利用する機会を得た.すなわち,個別銀行から個別貸出先企業への貸出残高データ,個別銀行の財務諸表データ,個別企業の財務諸表データの3層からなるデータセットを用いて銀行貸出行動に関する実証分析を行った.日本の低金利期間である1990年代中盤から2011年までの期間において,期間ごとに異なる銀行のリスクテイク行動が観察された.1990年代中盤では銀行の自己資本比率が低下したことによってリスクテイク行動(すなわち貸出行動)が抑制されていた.特に,経営上問題のある企業への貸出が抑制されていた.1990年代終盤から2000年代初頭の期間では,主要銀行の自己資本比率が改善したことでリスクテイク行動が促進された.同時にこの期間では,主要銀行の不良債権比率が悪化したことで経営上問題のある企業への追加貸出が増加した事実も観察された.2000年代中盤においても主要銀行の自己資本比率が改善したことによるリスクテイク行動の促進が観察された. 前年度までに実施した研究によって,地域によって異なる銀行のリスクテイク行動が観察されている.すなわち,都市部に属する銀行と地方に属する銀行ではそのリスクテイク行動が異なる.また,貸出以外の異なるリスクテイク行動も観察されている.研究期間全体を通じて,時期によって異なる行動,銀行の財務状況(特に,自己資本比率,不良債権比率)によって異なる行動,貸出先企業の財務状況によって異なる行動,地域によって異なる行動,貸出以外の異なるリスクテイク行動がそれぞれ観察された.
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Research Products
(1 results)