2013 Fiscal Year Research-status Report
金融危機・震災により流動性不足に陥った中小企業の資金調達行動の研究
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24730275
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鶴田 大輔 日本大学, 経済学部, 准教授 (40422589)
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Keywords | 企業金融 |
Research Abstract |
本研究は中小企業のマイクロデータを使って、2007年以降の金融危機や2011年の東日本大震災により、流動性不足に陥った中小企業がどのような資金調達行動を行っているかを明らかにすることをを目的とする。金融危機が発生してから様々な中小企業に対する政策的な金融支援が行われてきたことから、本研究はこれらの政策の評価も行う上でも大きな貢献が期待できる。 25年度は主に、2007年以降やそれ以前の金融危機に焦点を当て分析を行った。25年度に分析を行ったのは以下の点である。 第一に90年代後半の金融危機時から2000年代の半ばにかけて、負債比率が高い企業や債務超過に陥った企業の資金繰りや、利益率や売上高で測った事後的なパフォーマンスについて明らかにした。分析の結果、負債比率が高い企業や債務超過に直面している企業は、高い投資機会に直面しても、銀行融資や企業間信用を受けにくいことが明らかになった。ただし、これらの企業の事後的なパフォーマンスはむしろ高いことから、金融制約はそこまで深刻ではない。こ 第二に第三に2008年ごろのリーマンショック時に大きく企業間信用が減少しており、この現象は主に実物取引の縮小によるものであることが明らかになった。先行研究において、企業間信用は銀行融資を代替する機能を有することが主に論じられているが、このような機能は日本のリーマンショック時には観察されなかった。 第三ににリーマンショックを受けて始まった緊急保証制度についてのデータを分析し、金融機関がリスクの高い中小企業に対して保証付き融資を行っているかどうかを検証した。分析の結果、企業のリスクと信用保証残高の間に、様々な要因をコントロールしても正の相関がみられ、金融機関のモラルハザードの問題が統計的に支持された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年目の年度である本年度において、金融危機時の債務超過企業の動向、企業間信用に関する分析をおこなっており、これらの成果は国内の研究雑誌やディスカッションペーパーとして公表している。また、研究発表も精力的に行っており、得られたコメントを反映しながら研究を進めていく予定である。以上から、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に得られた分析結果をもとに、平成26年度以降は中小企業が2007年以降の金融危機時にどのような資金調達行動を行ったのかをより詳細に行う。前年度に明らかになった金融危機が中小企業へ与えた影響を踏まえて、金融機関、取引先企業などがどのように流動性不足に対応をしたのかを実証分析する。 2007年以降、世界規模で起きた金融危機の影響で不況が発生し、多くの企業の売り上げが大きく減少した。この結果、在庫が積みあがり、流動性不足に陥った企業が多く存在したと考えられる。また、同時に取引先の支払いの遅れにより、多くの企業の売掛債権が増加したと予想される。このような状況では現金が不足し、運転資金 需要が増加すると考えられる。企業はこの運転資金需要を何らかの手段でファイナンスする必要があるが、本研究はどのような手段で中小企業が金融危機による流動性不足に対するファイナンスを行っているのかを、実証的に明らかにする。特に、金融危機の時期には情報の非対称性の問題が中小企業においてより深刻になることから、どの様な主体がこの問題に効率的に対処できるのかを明らかにしながら分析する。 また、25年度までに分析されてきた結果を論文としてまとめ、海外の研究雑誌や国内のディスカッションペーパーとして公表できるよう、進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当研究の論文を海外の査読付き雑誌に投稿したものの、その審査期間が大幅に超過し、当初予定していた期間で修正ができなかった。そのため、修正にかかる費用(ネイティブチェックなど)が支出できず、次年度に繰り越しとなった。 次年度使用額は主に英語論文のネイティブチェックを受けるための論文校閲料に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)