2014 Fiscal Year Research-status Report
金融危機・震災により流動性不足に陥った中小企業の資金調達行動の研究
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24730275
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鶴田 大輔 日本大学, 経済学部, 准教授 (40422589)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中小企業金融 / 企業間信用 / 信用保証 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中小企業のマイクロデータを使って、2007年以降の金融危機や2011年の東日本大震災により、流動性不足に陥った中小企業がどのような資金調達行動を行っているかを明らかにすることをを目的とする。 26年度は主に、2007年以降やそれ以前の金融危機に焦点を当て分析を行った。26年度に分析を行ったのは以下の点である。第一に90年代後半の金融危機時から2000年代後半の金融危機時にかけて、負債比率が高い企業や債務超過に直面している企業は、高い投資機会に直面しても、銀行融資や企業間信用があまり利用できないことが明らかになった。ただし、これらの企業の事後的なパフォーマンスはむしろ高いことから、金融制約はそこまで深刻ではないと解釈できる。第二に、これらの負債比率が高い中小企業の事後的なパフォーマンスの分散が高いことが明らかになった。この分析結果は負債比率が高い中小企業がハイリスクハイリターンの投資を行っていることを示唆する。ただし、担保資産を多く保有している企業は、負債比率が高くてもハイリスクハイリターンの投資をあまり行っていないことが明らかになった。第三に、リーマンショックを受けて始まった緊急保証制度についてのデータを分析し、金融機関がリスクの高い中小企業に対して保証付き融資を行っていることを明らかにした。この結果は、金融機関のモラルハザードが統計的に有意であることを意味する。第四に金融危機前において、経営状況が悪化した金融機関をメインバンクとしている場合、企業はメインバンクをより高い確率で変更することを明らかにした。また、その結果として事後的なパフォーマンスが上昇することが明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三年目である本年度において、金融危機時の債務超過企業の分析や、流動性ショックに直面した際の企業の企業間信用と銀行借入に注目した分析を行っている。これらの研究成果は海外の主要な学術雑誌に掲載、もしくは掲載が決定している。また、金融危機以降の信用保証の分析の成果もディスカッションペーパーとして公表されており、概ね順調に研究が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度に得られた分析結果をもとに、27年度以降は引き続き、中小企業が2007年以降の金融危機時にどのような資金調達行動を行ったのかをより詳細に行う。26年度に明らかになった金融危機が中小企業へ与えた影響を踏まえて、金融機関、取引先企業などがどのように流動性不足に対応をしたのかを実証分析する。また、東日本大震災後の中小企業の資金調達方法に関して詳細な分析を行う。
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Causes of Carryover |
26年度後半に分析・研究報告用のノートパソコンの購入を行う予定であったが、主な研究報告の予定が27年度にずれたことから、より高性能のパソコンを購入するために27年度に購入を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、27年度の早い時期に、ノートパソコンの購入を予定している。
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Research Products
(6 results)