2012 Fiscal Year Research-status Report
高頻度データを用いた市場期待の計測:外国為替市場を事例として
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24730277
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
北村 能寛 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (90409566)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / 市場期待 / 外国為替市場 |
Research Abstract |
外国為替市場におけるオーダー・フローを、理論モデルを推定することで分解し、市場期待を反映した要素を抽出する。そして、それが実際の為替レートとどのように関係するかを分析し、現在もその分析は継続中である。様々な仮定に基づき、複数の理論モデルを構築し推定するといったことを実施している。この研究の手法を直観的に説明すれば、取引は期待に基づく取引とそうでない流動性制約等に動機づけされた取引に分類することが可能と考える。そして、後者の取引は、たとえ為替レートが変動しないと市場参加者が予想した場合でも生じるものであるから、その点で前者の期待に基づく取引と識別できると考えた。この仮定こそがそれら2つの取引を識別する際に、重要なものとなる。現在はこの仮定に基づいた複数のモデルを推計中であり、現実のデータとの整合性を検討している。 また、この期待計測の研究に関連して、ドルが円に対して減価する場合の方が対円でドル増価の場合よりも、複数の地域間におけるボラティリティの波及効果が大きいといったことが判明した。その一方で、ドル・ユーロの通貨ペアに関しては、そのような非対称的なボラティリティ波及効果は観察されなかった。為替変化のボラティリティを為替市場の不確定要素と考えれば、ドル、ユーロといった通貨が安くなれば市場の不安要素が高まり、さらにはその不安心理が波及すると解釈される。これは、ユーロ、円、ドルの中で比較的な安全な通貨と考えられる円においては、市場が不安になるほど安全通貨としての円に対する需要が高まるといったことに関連すると解釈される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度中に国際専門誌にて研究成果の一部を公刊するに至った。また、研究の中心となるモデルはある程度出来上がっており、現在そのモデルに基づく市場期待推定を繰り返し試みている。そして、その結果を基に、実証的運用により即した形でのモデルの微調整を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
取引データから市場期待を抽出するといった方法を確立し、2013年度中にその成果を論文とする。現在は、計算の実行可能性を探るべく様々なモデルを構築し、試験的な計算を繰り返している。加えて、その主たる研究成果を求める過程において副産物的に生じた研究成果をも、国際専門誌を通じて積極的に発信していく。尚、副産物的な研究として、株式市場での株価変動が、為替市場の市場心理に影響するといったことを研究テーマとして研究を進めている。具体的には、円ドル為替レートにおいて、日経平均ならびにダウ平均の変動が円ドル為替レートの流動性水準に影響を及ぼすのではないかという仮説を検証している。そして、これまでの研究で、ダウ平均の下落は、円ドル為替市場の流動性水準を低下させることが判明している。今後はこの事実を詳細に検証し、背後にどのような市場心理があるのかを明らかにしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会での報告費用(渡航費、滞在費)、大規模データを計算するためにワークステーションを新たに購入することも検討中である。
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Research Products
(1 results)