2015 Fiscal Year Annual Research Report
銀行間ネットワークが金融制度に与える頑健性と脆弱性に関する理論研究
Project/Area Number |
24730278
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大橋 賢裕 早稲田大学, 商学学術院, 助教 (10583792)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミクロ経済学 / ゲーム理論 / 銀行預金制度 / 繰り返しゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究における筆者のねらいは,「銀行制度の頑健さ」を理論的に調べることにあった.銀行は預金者から預かった資産を投資する.そしてそのリターンを預金者と分け合う.本研究は,この単純な構造を機械的に行う主体として,銀行をモデル化した. 焦点は銀行の長期的インセンティブである.以下,研究内容と得られた結果を解説する. 銀行は,家計の資産を投資することで利益を上げる.その際注意すべき点が二つある.ひとつは家計に「預金者」となってもらうための『参加制約』である.もうひとつは,預金者に,銀行の意図通りの行動をとってもらうための『誘因制約』である.本稿では,支払い人数に関する不確実性を無視できる環境では,誘因制約を満たす契約が書ける,とだけ言っておく. もし家計と銀行が一回限りの預金契約を交わす場合,銀行が競争的ならば,満期には銀行の手元に利潤は残らず,それらは全て預金者の支払いに回される.しかし銀行は家計よりも長期的に市場に存続するプレーヤーである.長期的インセンティブを考慮すると,銀行は,たとえ競争的な環境であっても,満期に利潤を手元に残し,将来の再投資に使う可能性がある.筆者はこの可能性を繰り返しゲームによって検討した.結果は筆者の予想通りで,銀行は自身の利潤の一部を再投資に回すという行動が,部分ゲーム完全均衡として実現することがわかった.均衡下では,将来の預金者は,現在の預金者よりも多くの支払いを受ける.さらに筆者は,どの程度多く受けることが可能かを,誘因制約を満たす契約が書ける場合について調べた.その結果,いくらでも多くの支払いを受け取ることが可能になることがわかった. 本研究は,銀行業界に対する規制が全くなく,考えるべき経済的制約も最小限である場合,銀行自らの活動で実現可能な配分を決定した.この結果を起点とし,経済的制約下での実現可能集合の大きさを決定することを将来課題としたい.
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Research Products
(1 results)