2012 Fiscal Year Research-status Report
新規株式公開時の価格形成における個人投資家の役割に関する実証研究
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24730279
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
高橋 陽二 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 准教授 (20566533)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 新規株式公開(IPO) / 価格形成 / 個人投資家 |
Research Abstract |
研究の目的、研究実施計画に基づき、IPO企業の属性、アロケーション状況に関するデータセットの整備及びこれまでの研究の精緻化に取り組んだ。平成24年度は、データセット整備の過程において、IPO企業の価格形成と所在地の関係について実証的に分析を行った結果、『証券経済学会年報』及びProceedings of 2012 International Conference on Businee and Informationに論文を掲載した。論文の内容は、以下のようにまとめられる。 IPO企業の所在地を検討することによって、IPO企業が情報優位者か劣位者かを認識できる。都市部のIPO企業は情報優位者であり、そうでないIPO企業は情報劣位者であると判断できる。そうであれば、より適切な価格形成が実現されるのは、都市部のIPO企業ということになる。しかしながら、IPO企業の価格形成には、投資家がどのような投資行動を行うのかが大きく影響する。すなわち、楽観的な投資家が多い都市部のIPO企業であれば、アンダープライシングの程度が大きくなることが考えられる。そのため、楽観的な投資家の数が異なる好不況期が含まれる2006-2010年を分析対象とし検証した。 分析結果は、(1)都市部のIPO企業は、そうでないIPO企業と比べてアンダープライシングの程度が大きくはなく、(2)好況期でも同様の傾向が示された。不況期において、投資家は情報にアクセスしやすい、都市部の東京都であれば、安心感を受けることからより人気化する傾向があった。日本のIPO市場では、個人投資家が約8割を占めていることが知られており、ローカルバイアスが、好況期ではなく不況期にこそ強まることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」理由は、大きく2つある。 はじめに、アロケーション状況に関するデータセットの整備に関して、当初の想定より考慮すべき点がいくつかあることがわかったため、こちらでの確認作業に時間がかかっている。そのため、他大学の大学院生を活用したデータセットの整備ができていない状況にある。次に、IPO企業の属性データを整備する過程において、研究課題である「新規株式公開時の価格形成における個人投資家の役割に関する実証研究」と密接に関係する論点「IPO企業の価格形成と地域性/所在地」に関する論文の作成に一部注力したことから、十分な時間の確保ができず遅延の理由のひとつとなっている。しかしながら、現状では、上記2つの理由について概ね改善の方向に向かっている。そのため、これまでの遅延を取り戻せるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初から想定している推進方策を推し進めていく予定である。そのような方策を実施することによって、大きな問題はないと考えている。しかしながら、【現在までの達成度】で述べたような課題は生じている。そのため、この点に基づき、今後の研究の推進方策について再検討したい。 はじめに、データセットの整備については、可能な限り早期に「動ける」体制を整え、それを稼働する予定である。こちらで考慮すべき点も徐々に明らかになっており、そのような体制を作ることに障害は少なくなっているものと考えている。そのうえで、当初の計画の軌道に乗せていきたい。 次に、研究課題と密接に関係する論点(「IPO企業の価格形成と地域性/所在地」)について述べる。このような論点は、研究課題に関する調査やデータ整備を進めていくなかで生まれた研究の種である。研究課題との関係も深く、その有益性も高いものと考えている。そのため、継続的に研究を行いながら、当初から計画している研究課題とどのようなシナジーが生み出せるのかを模索したい。当然ながら、研究課題に基づく当初の推進方策に積極的に注力することに変わりはない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の大部分を占めるものとして、上記したデータセット整備の体制を整えるための人件費・謝金、またそれを処理するうえで必要となる設備備品費がある。これらは、当初予定では平成24年度に実施されるものであったが、上記した理由によって、平成25年度に実施する予定である。 上記の実施内容を踏まえたうえで、当初から予定していた平成25年度以降の計画を進める計画である。具体的には、研究の結果を学会及び研究会、セミナー等で報告しながら、論文をより精緻化したうえで、査読付き雑誌への投稿、改訂、掲載を目指す予定である。このような活動の過程において、それに見合うだけの研究費が必要となる。
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Research Products
(4 results)