2013 Fiscal Year Research-status Report
新規株式公開時の価格形成における個人投資家の役割に関する実証研究
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24730279
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
高橋 陽二 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 准教授 (20566533)
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Keywords | 新規株式公開(IPO) / 価格形成 / 個人投資家 |
Research Abstract |
研究の目的、研究実施計画に基づき、IPO企業の属性及びガバナンス構造、アロケーション状況に関するデータセットの整備とともに、これまでの研究の精緻化に取り組んできた。平成25年度の実績は、データセットの整備とともに、雑誌論文1件(『先物・オプションレポート』)と学会発表2件(企業家研究フォーラム、証券経済学会)であった。これらの研究概要は以下のようにまとめられる。 2004年4月-2005年12月におけるジャスダック市場のIPO企業を対象に、“Divergence of Opinion”の指標として、初値形成プロセス(オープニングスプレッド、取引成立までの時間、フリッピングレシオ)とアンダープライシング及びIPO後の株価パフォーマンスの関係を再検証した。分析の結果、取引成立までの時間がアンダープライシングにプラスの影響を与え(とりわけ、板寄せ方式)、次にアンダープライシングが株価パフォーマンスにマイナスの影響を与えていることが明らかとなった。個人投資家の多い日本のIPO市場では、取引成立を遅らせることで買いが買いを呼ぶという現象が生じている可能性がある。 また、2006-2010年のIPO企業を対象に、女性役員が果たす役割について検討した。本研究は、IPO企業の属性及びガバナンス構造に関するデータセットを整備する過程のなかで行われたものである。ここでは、多くの個人投資家は、取締役がCEOの配偶者であるようなIPO企業に対して積極的な買い注文を出さない傾向が明らかになった。 最後に、アントレプレナー・ファイナンスにおけるリアル・オプションの有用性について論点を整理している。IPO企業の価格形成では、個人投資家および機関投資家へのアロケーションという視点が今後の展開として有益であるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「やや遅れている」理由は、大きく2つある。 はじめに、アロケーション状況に関するデータセットの整備に関して、留意点が多いため、研究代表者ひとりでの作業となっている。そのため、当初予定より大幅に時間がかかっている。 次に、IPO企業の属性及びガバナンス構造に関するデータセットを整備する過程において、研究課題に密接に関係する研究である「新規株式公開企業の初値形成プロセスと価格形成」、「女性が役員に就任する要因とその影響」に一部注力したことにある。 IPO企業の属性及びガバナンス構造に関するデータは、2000-2010年まで概ね整備できたことから、アロケーション状況に関するデータとの統合後、研究の遅延を取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初から想定している推進方策を継続する予定ではあるが、【現在までの達成度】が「やや遅れている」状況が大幅に改善される状況にはない。そのため、今後の研究の推進方策について再検討したい。 課題は、(1)当初の推進方策に拘った点、(2)研究課題に関係する研究への注力にある。 データセットの整備について、組織的に動かすことに拘ったために、留意点に対して十分な考慮ができず、うまく稼働しないという問題が生じた。そのため、現在は研究代表者が逐一作業・確認しながら整備を進める方策に転換した。 次に、研究課題に密接に関係する研究についてである。平成24-25年度と言及しているが、研究課題及び密接に関係する研究それぞれまとめるべき時期であり、データセットの整備にも目処が立ったことから、順次これらの研究を精緻化することに注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
データセットの整備を研究代表者がひとりで実施する方策に転換したことから、人件費・謝金に大幅な余裕ができた。また、学内の研究助成金の支援を受けたため、物品費・旅費にも余裕ができた。 上記のような理由から、次年度使用額が生じている。 翌年度分として請求した助成金と合わせた研究計画として、以下のように考える。 これまでの研究成果をもとに、研究者との打ち合わせ、学会、研究会、セミナー、コンファレンス等で報告しながら研究を精緻化する。そのための経費として、改訂費、参加費、旅費、投稿費等に多額の資金がかかるものと想定される。また、その過程において追加的なデータや書籍等に関わる経費も必要となる。
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Research Products
(3 results)