2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730280
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
吉見 太洋 南山大学, 経済学部, 講師 (30581798)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 開放マクロ経済学 |
Research Abstract |
本研究課題の主たる目的は、先のユーロ圏における経済・財政危機を描写するようなモデルを構築し、それに関する一定の政策的示唆を得ることにある。研究計画でも述べた通り、例えばギリシャの放漫財政は、そもそも財政規律の低い同国がユーロ圏の足を引っ張っているという文脈で語られることが多いが、他方でユーロへの加盟がギリシャの長期金利を大幅に低下させ、内生的に同国の財政規律を低下させたという側面がある。本研究では、こうした共通通貨の導入がとりわけメンバーである小国開放経済に与える、財政規律面での影響を問題点として考察する。 こうした研究課題に取り組むにあたって、平成24年度は主に先行研究の洗い直しと、学会参加による情報収集を行った。現在本務校の留学制度を利用し、米国ニューヨークのコロンビア大学に滞在をしている。したがって、先行研究の洗い直し作業は主に同大学の図書館等を利用して進めている。また、情報収集の面では、平成24年11月にUniversity of Colorado Boulderにおいて開催されたMidwest Macroeconomics Meetingsに参加した。また、平成25年1月にはSanDiegoで開催されたAmerican Economic Associationにも参加した。これらの学会参加と現地での意見交換を通じて、多くの示唆を得ることが出来た。 また、当初研究計画にはなかったものの、派生的研究としてアジアの通貨制度を描写する経済モデルの構築と、共通通貨域内における労働移動が経済厚生に与える影響について検討する理論分析にも取り組んでいる。前者については国際誌への投稿をすでに済ませ、現在第一回目の改訂依頼を受けている。後者についても同様に国際誌への投稿を済ませ、編集者からの返事を待っている状況である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項でも述べた通り、共通通貨導入が財政規律に与える影響を考察する研究について、平成24年度は前提となる先行研究の洗い直しと情報収集に終始した。しかしながら、派生的な研究として取り組みを行ったアジアに関する為替相場制度の検討を行う研究については、すでに論文としての取りまとめと国際誌への投稿を済ませ、第一回目の改訂にあたっている最中である。同研究については、平成24年にBangkokのThailand Development Research Institute(TDRI)でも研究報告を行い、多くの有益な意見を得ることが出来た。また、同研究の中で構築している「小国開放経済」の分析モデルは、ギリシャのようなユーロ圏における小国開放経済を描写する上でも即座に応用可能なものである。この意味で、派生的な研究ながら一本の論文を平成24年度の段階で形に出来たことは、本課題であるユーロ圏の問題を扱う上でも非常に大きな収穫であると考えている。また、更に共通通貨圏における労働移動という古典的ながら多くの分析がなされてこなかった課題についても一本の研究論文をまとめることが出来た。こちらについても既に国際誌への投稿を済ませ、返事を待っている状況である。これら二本の派生論文を形にして投稿まで持ち込めたことが、平成24年度の具体的な成果であり、また平成25年度以降本課題を進める上での大きな足場となるものである。この意味から、平成24年度については、おおむね順調な形で研究課題に取り組めたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方法について、第一に実現したいのは、先に上げた二本の派生研究の雑誌掲載である。アジアに関する派生研究については、すでに依頼された改訂も概ね完了し、数日内に再投稿を行うことが出来る見通しである。労働移動に関わるもう一つの派生研究については、未だ雑誌側からの返事がきていないことから、返答を待っての対応となる。しかしながらどちらの研究に関しても、まずは平成25年度内の雑誌掲載を目指して動いていきたいと考えている。 ユーロ圏と財政規律の課題については、これら派生研究の再投稿を済ませた時点で改めて着手したいと考えている。平成24年度を通じて先行研究の洗い直しと、基礎となるモデル構築は派生研究の成果もあって概ね完了しているため、改めて本課題の目的に合った拡張を加え、研究を進めていくつもりである。 具体的な推進ペースであるが、平成25年度の冬には論文としての第一弾の形式を整える予定である。それを受けて、参加が可能な国際学会への申請を年度内に進める。それと同時進行で、形にした派生研究の学会報告機会を設ける。現在本務校である南山大学の留学制度を利用して滞在しているコロンビア大学であるが、こちらでの滞在は平成25年度が最終年度となる。同大学は研究資料の面でも大変優れているため、滞在期間中に同大学の施設を十分に利用しながら、研究課題を論文の形にまとめて帰国をしたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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