2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730280
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
吉見 太洋 南山大学, 経済学部, 講師 (30581798)
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Keywords | 開放マクロ経済学 / 国際金融 / 一般均衡モデル / 金融政策 / 通貨同盟 |
Research Abstract |
平成25年度は本研究課題の成果として二編の論文を、国際的学術誌に公刊することが出来た。 第一の成果論文は、“Currency Integration under Labor Mobility: When Cost Is Incurred”(Journal of Economic Integration, Vol.29, No.1, pp188-209, 2014)である。こちらは「最適通貨圏理論」としてこれまで認識されてきた「労働の移動性」について一般均衡モデルに基づいて妥当性を検証し、各国から雇用される労働力が不完全代替である場合には、必ずしも古典的な議論が成立しないことを示すものである。 第二の成果論文は、“Lending Rate Spread Shock and Monetary Policy Arrangements: A Small Open Economy Model for ASEAN Countries”(Asian Economic Journal, Vol.28, No.1, pp19-39, 2014)であり、銀行貸付が重要な資金調達手段であるASEAN地域において、銀行貸付金利のショックが外国の金融政策ショックと同程度の厚生損失を発生させ得ることを、動学的一般均衡モデルのシミュレーション分析から明らかにしている。 本研究課題の主たる目的は政府の財政規律を考慮に入れながら、通貨同盟や開放経済における金融政策運営について考えることにあった。前掲二編の成果論文はいずれもこうしたトピックに関わりが深く、本研究課題の遂行の副産物として得られた成果である。 これらの論文公刊を前提として、現在は更に二つの方向性から関連研究を進めている。第一の方向性は、前掲のJournal of Economic Integration掲載論文に不完全パススルーを導入して、新たな示唆を導くというものである。こちらについては既に分析が完了し、既に国際的学術雑誌への投稿を済ませている。 第二の方向性は、為替パススルーに関する理論と実証両面からの研究である。為替パススルーは開放経済における適切な金融・為替政策運営に深く関わっており、本研究課題に取り組む上でも重要な意味を持つものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の申請時において、平成25年度内に関連論文二編をとりまとめて、国際的学術雑誌に投稿することまでを目標として設定した。実績の箇所でも書いた通り、副産物的な成果ではあるものの、平成25年度には投稿のみならず、二編の論文の刊行まで達成することが出来た。したがって、本研究課題は現状までおおむね順調に進展していると見ることが出来る。 また、申請時の目標においては、関連する三編目の論文をとりまとめるところまで踏み込んでいた。実績概要でも触れた通り、既に三編目の論文を取りまとめた上で学術雑誌への投稿までを済ませている。これらの現状を踏まえて、達成度はおおむね順調と結論づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
先に触れた通り、本研究課題ではすでに二編の論文を査読付き国際雑誌に刊行し、三編目の関連論文の投稿までを済ませている。まずは、この三編目の論文の刊行を目指すことが直近の課題となる。 また、実績概要でも触れた通り、為替相場変動が貿易財の価格に与える影響に焦点を当てた「為替パススルー」の問題に関連する研究も始めることが出来た。三編目の論文刊行を目指すとともに、パススルー研究についても複数本の論文を26年度に取りまとめたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は勤務先大学から、教員向け留学機会を得て、コロンビアビジネススクールに客員研究員として在籍をしていた。この機会を利用して様々な場所での学会・研究会報告を盛んに行うことが出来た。その一方で、学会・研究会参加にかかる旅費の支出を当初の予定よりも若干、抑えることができたため、次年度使用額が生じた。結果として35,742円の差額が次年度使用額として余った。 平成26年度は、25年度以上に国内外での研究報告機会が予定されている。したがって、国内での学会報告の際の旅費として、25年度からの繰り越し額を利用したいと考えている。
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