2012 Fiscal Year Research-status Report
金融リテラシーに関する日米比較調査:住宅ローンの理解に与える影響
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24730281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
遠藤 秀紀 日本福祉大学, 経済学部, 准教授 (10340283)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 金融リテラシー / 家計管理 / 日米比較 / 国際情報交換(アメリカ) |
Research Abstract |
日米の大学生及び20~69歳の者を対象に行ったアンケート調査データをもとに下記2点を研究した。 1、大学生の金融リテラシーの形成要因の日米比較 本研究では、金融に関する基礎知識が家計管理におけるさまざまな意思決定への自信を左右することが確認された。具体的には、インフレ局面における家計購買力の保護の方法や自己資金の流動性など基礎的な知識について、アメリカより日本の学生で有意に低く、このことが両国の家計管理に関する意思決定への自信の差を拡大させるとの結果が得られた。また、日本の学生は金融商品の持つリスクへの理解が万全でなく、不十分なリテラシーの背後にその理解度が関与していることも示唆された。たとえば、緊急時の資金調達手段として「住宅購入の支払い済み頭金よりも株式売却のほうが流動性の低い手段」と回答する学生が、アメリカの16.7%に対して日本では49.8%を占めた。この傾向は、20~69歳の者への調査(一般調査)でも確認された(アメリカ21.8%、日本49.6%)。 2、日本における金融リテラシーの形成要因 金融リテラシーに関する質問に「わからない」と回答する者は、アメリカよりも日本で顕著に確認される。金融リテラシーが不十分な者は「わからない」を選択する傾向にあると先行研究で示されており、その要因解明は金融リテラシー形成に貢献すると考えられる。分析結果から、回答者が12~17 歳の頃、親が退職の備えをしていたかを把握していない者に、不明確な回答をする傾向が強く確認された。また、経済・経営およびファイナンスに関する講義の受講経験は、金融リテラシーの質問に不明確な回答をする可能性の低下に寄与した。本研究から、親から子へ家計管理の重要性を早い段階で教えることや、本人が経済や経営、ファイナンスに関する講義を受講することが、不十分なリテラシーを改善する要素となり得ると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り「日米の大学で実施したパイロット調査(平成23年度)の分析」、「調査票の完成と調査実施」、「20~69歳の男女を対象とした調査による金融リテラシーの形成要因の分析」の3点を遂行し、2点の論文を執筆した。 パイロット調査による日米比較分析の結果は、"Observation of Financial Literacy among the Selected Students in the U.S. and Japan"として論文にまとめ、2013年3月にJournal of Education for Businessに投稿した。 調査票作成については、次年度以降の調査票改訂を極力省くため、複数回の見直しを実施した。まず、年度初期にパイロット調査(平成23年度)の結果を精査し、アメリカの研究協力者との検討を経て平成23年度版調査票を大幅に改訂した。次に、その調査票による試験的調査を10月に実施し、再修正を経て平成24年度版調査票を完成させた。同調査票による調査はインターネット調査会社に委託し、12月に実施済みである。 平成24年度版調査票に基づく金融リテラシーの形成要因の分析は、「日本における金融リテラシーの形成要因-選択肢の構造がもたらす影響について」として論文化し、社会科学の計量・実証分析ワークショップ(於:石川県政記念 しいのき迎賓館、平成25年3月23・24日)にて報告した。 論文2点のうち1点は投稿を済ませており、現時点ではレフェリーによる査読段階にある。また、もう1点は学会報告に間に合わなかったため、計量分析の専門家で構成されるワークショップにて報告を行った。さらに、今年度作成した調査票は平成25年度調査にもほぼそのまま適用できるため、さらに調査・分析効率を高めることが可能とみている。これらの理由から、おおむね順調な進展状況と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
調査票の精査は今年度に済ませており、今後はアンケート調査の早期実施によるデータの蓄積と下記項目の分析を、アメリカの研究協力者との連携のもとで推進する。 【1、平成25年度調査票の検討および調査の実施】今年度の研究成果を踏まえ、平成25年5月までに質問項目の一部入替を検討する。調査委託会社の選定を6月に行い、7~8月初旬までに20~69歳の者を対象とする調査(一般調査)を実施する予定である。今年度よりも早い時期に調査を実施することで、データの回収・分析に十分な時間を充てることが可能となる。 【2、金融リテラシーの形成要因の分析】今年度作成した未投稿論文を推敲し、平成25年度前半をめどに国内あるいは国外の学術雑誌に投稿する。また、日米比較研究については、リスクへの態度と金融リテラシー形成との関連を中心に検証を進める。これに関しては、平成25年度調査の実施後(8月下旬~9月上旬)に渡米し、研究協力者と集中討議を行い、年度内の論文化を目指す。 【3、金融リテラシーが住宅ローンの理解に与える影響】住宅ローン関連の質問項目は今年度の一般調査でも設定したが、住宅ローンを保有する回答者のデータを蓄積するため、データの精査・分析は平成25年度調査実施後に(2年分のデータを蓄積した段階で)開始する。これに関して、アメリカにおける住宅ローン状況を把握するため、渡米時に現地不動産業者等から情報を収集する予定である。なお、大学生で住宅ローンを保有する者は希少と考えられるため、大学生調査では住宅ローンに関する質問項目を別途設定する。仮想質問による住宅ローンの把握・理解度の確認も視野に入れつつ、平成25年度一般調査の分析結果や専門家との意見交換を踏まえて質問項目を作成する。このため、大学生調査は12月~翌年1月に実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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