2013 Fiscal Year Research-status Report
中国の経常収支黒字と所得格差:貿易財・非貿易財モデルによる理論分析
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24730282
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
五百旗頭 真吾 同志社大学, 商学部, 准教授 (30411060)
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Keywords | 経常収支 / グローバル・インバランス / 貯蓄投資バランス / 中国経済 / 所得格差 / 非貿易財 |
Research Abstract |
本研究の目的は、2部門開放マクロ経済モデルを用いて、中国の経常収支黒字拡大と所得格差拡大の同時発生メカニズムを解明することである。そのためには、まず1部門モデルで描写できるメカニズムを明らかにし、それとの比較で、2部門モデルで初めて描写できるメカニズムを明らかにする必要がある。既に、1部門モデルを用いて、「低所得水準からの高度経済成長」が中国の経常黒字拡大要因となりうることを解明した。 平成25年度は、実証面に研究の比重を移し、世界金融危機後の中国の経常収支黒字の急減の原因を探ることで、危機前の黒字拡大要因に関する示唆を得ることに務めた。その結果、危機後の中国の黒字急減が危機前の国内信用成長の低迷と相関している可能性を発見した。 まず2008年以前5年間と2009年以後4年間の経常収支/GDP比率の比較から、経常収支が世界金融危機を境に、赤字から反転した国、黒字から反転した国、それ以外の3グループに分類した。次に2008年以前の経常赤字国グループと経常黒字国グループそれぞれについて、世界金融危機を境に経常収支が反転した国を1と反転しなかった国を0として、トービット・モデルを推計した。そして、2008年以前5年間の国内銀行信用/GDPの伸び率が経常収支の反転の発生確率に統計的に有意な影響を持つという結果を得た。銀行信用の伸び率が高かった経常赤字国ほど、また逆に銀行信用の伸び率の低かった経常黒字国ほど、経常収支が反転する傾向にあった。 この結果は、所得格差の拡大が国内投資需要の低迷を招き、国内投資需要の低迷が国内資金需要の停滞から国内信用成長の低迷を招く、という因果関係が中国経済において作用していた可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「研究の目的」に掲げた「貿易財・非貿易財部門からなる2部門開放マクロ経済モデルを構築し、貿易財部門に偏った需要・生産性ショックが部門間所得格差拡大を通じて経常黒字拡大を生む可能性を明らかにする」点については、近く完了見込みである。当初の予定と比べると、進捗度は少し遅れている。だが、それは、2部門経済モデル構築の過程で生まれた疑問点解消のために時間を割いたためであり、有益かつ不可避な回り道であったと考える。 加えて、本年度は、完成年度を迎えた科学研究費基盤(B)の研究プロジェクトとの関連で実証研究に時間を多く割かざるを得なかったため、本研究課題の主テーマである理論モデルの構築に割く時間が限られ、その進捗がやや遅れることになった。 また、昨年度は所属機関における公務負担が一時的に増加したためエフォート率が低下したことも、進捗度の遅れの一因である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本モデル(貿易財・非貿易財2部門モデル)の論文化・査読付きjournalへの投稿、基本モデルの拡張を順次行う。第一に基本モデルを26年8月中に完成させ、国内学会・研究会で発表する。 第二に、基本モデルの拡張を行い、論文化し、英文ジャーナルへ投稿する。拡張は金融資本市場の不完全性の導入という面から進める。この点に関しては、本年度の研究成果が役に立つ。本年度に行った実証研究の結果は、世界金融危機前の中国の経常黒字拡大と危機後の黒字急減の一因が危機前の銀行信用の低迷にあったことを示唆している。逆に言えば、危機前のグローバル・インバランス期の中国の経常黒字急拡大が銀行貸出低迷による実物投資の低迷あるいはタンス預金の増大に起因していた可能性が示唆される。国内銀行部門の資金仲介機能の低さ、すなわち金融市場の不完全性が経常黒字拡大をもたらしていた可能性である。 高所得者は貯蓄資金を銀行預金ではなく証券投資に回す傾向が強いかもしれない。そうであれば、所得格差拡大は銀行による資金仲介機能を低下させる。このような所得格差拡大と金融市場の不完全性の関係を論理付けることで所得格差拡大と経常黒字拡大の相関関係を証明するという方向で研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究成果としての論文作成の進捗度が予定より遅れた結果、国内外での研究発表の機会を作れず国内・海外出張旅費の支出額が予定を下回ったためと、英文添削サービス費用が生じなかったため。 約32万円のうち、20万円を国内外での研究発表のための出張旅費に、約12万円を英文添削費用に充当予定である。
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Research Products
(2 results)