2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国の経常収支黒字と所得格差:貿易財・非貿易財モデルによる理論分析
Project/Area Number |
24730282
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
五百旗頭 真吾 同志社大学, 商学部, 准教授 (30411060)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 経常収支 / 国際資本移動 / 世界金融危機 / 過剰融資 / グローバル流動性 / 中国の経常収支黒字 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度には、2000年代の中国の経常収支黒字拡大の裏側で起こっていたグローバル流動性の拡大についてその特徴を整理し,論文「グローバル流動性とマクロプルーデンス政策」『社会科学』45巻4号として発表した。グローバル流動性とは「国際金融市場における資金調達のしやすさ」を指す新しい用語であり,2007~09年世界金融危機の一因はグローバル流動性の過剰な高まりにあったと理解できる。同論文では,まず多義的なグローバル流動性という概念を整理する5つの視座――民間か公的か,金融部門向けか非金融部門向けか,先進国間か先進国-新興国間か,国境を越える貸付か外貨建て国内貸付か,銀行内貸付か銀行間貸付か――を提示した。そして,世界金融危機に至る局面では金融部門流動性,先進国間流動性の二面におけるグローバル流動性の膨張が重要であったこと,危機後は先進国間流動性に代わって新興国向けグローバル流動性の動向が重要になっていることを明らかにした。さらに危機後に改定施行された国際銀行規制バーゼルⅢは,危機後に拡大している新興国向けグローバル流動性の過剰な膨張・収縮の抑止には不十分である可能性を論じた。 研究期間全体を通じて,理論・実証の両面から,2000年代前半の中国の経常収支黒字急拡大の要因を検討してきた。その成果として,中国の経常黒字急拡大の要因として新たに三つの仮説を提示したことが挙げられる。すなわち,(1)低い一人当たり所得水準からの高度経済成長ゆえに家計貯蓄率が高かったこと,(2)対GDP比で見た対外純資産が低位であったこと,(3)国内銀行貸出の対GDP比成長率が低かったことの3要因である。
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Research Products
(1 results)