2012 Fiscal Year Research-status Report
非伝統的金融政策の波及メカニズムに関する実証研究―金融構造の視点からの日米比較
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24730285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
王 凌 阪南大学, 経済学部, 准教授 (60574019)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 金融政策 / リスク・プレミアム / 金融構造 / クレジット・ビュー / 日本 / アメリカ |
Research Abstract |
今年度は、金融構造の違いによって、日米の非伝統的金融政策がリスク・プレミアムへの波及効果に有意な相違があるかどうかを、日本とアメリカの時系列データを用いながら実証的に分析した。 銀行中心型金融システムを有する日本では、主に市中銀行から長期国債を買入れることによって、「量的緩和政策」が行われていたのに対して、市場中心型金融システムを有するアメリカでは、金融市場参加者(銀行以外の金融機関や投資家なども多く含まれる)への貸出および市場性の高い金融商品の買い入れで、CE&LSAP1が実施されていた。 そして、日本とアメリカの時系列データをそれぞれ用いて行った実証分析の結果をまとめると、以下の通りである。 (1)日本でも、アメリカでも、中央銀行による流動性の供給が短期リスク・プレミアムに有意な影響を与えることが明らかとなった。日本では、それはマイナスの影響であるのに対して、アメリカではプラスの影響である。(2)日本でも、アメリカでも、中央銀行が金融政策を運営する際に、リスク・プレミアムの動向を注意深く観察していることが明らかとなった。(3)日本では、長期リスク・プレミアムに対する「量的緩和政策」の効果が検出されなかった。特に注目に値するのが、「量的緩和政策」の主な実施手段としての日本銀行による長期国債買入れは、短期リスク・プレミアムにも長期リスク・プレミアムにも、有意な影響がない。一方、アメリカでは、FRBの流動性供給が長期リスク・プレミアムにプラスの影響を与えることが検出された。(4)アメリカでは、“CE&LSAP1”期間中、実体経済と金融との密接な関係が確認された。しかし、日本では、「量的緩和政策」の期間中、このような実体経済と金融との関係が統計的に確認されなかった。 したがって、金融構造の違いによって、日米の非伝統的金融政策がリスク・プレミアムへの波及効果に有意な相違があると言えよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日米両国の銀行貸出行動および資産価格の分析を行う前に、なぜそのような分析が必要なのかを説明する研究が不可欠であると考え、日米両国の金融市場におけるリスク・プレミアムに関する分析を新たに今年度の研究内容に入れた。その研究結果によって、日米両国の銀行貸出行動および資産価格の分析の必要性が明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究によって、日米両国の銀行貸出行動および資産価格に関する分析の必要性が明らかとなった。この二つの分析は、次年度の研究内容である。具体的に言うと、 1.イベント・スタディー分析および時系列分析の手法を用いて、日米の非伝統的金融政策が資産価格に与える影響を分析し、非伝統的金融政策の資産価格への波及効果を計測する。 2.マクロとミクロの両面から、日米で実施されてきた非伝統的金融政策が銀行貸出にどのような影響を及ぼすかを実証的に分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費を、計量ソフトの購入、データサービスの利用、学会研究報告に係る旅費などに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)