2012 Fiscal Year Research-status Report
構造推定法にもとづいた政府間の租税競争の新しい分析
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24730286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
名方 佳寿子 摂南大学, 経済学部, 講師 (70611044)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 租税競争 / 構造推定 |
Research Abstract |
平成24年度においては消費者のタバコとガソリンに対する効用関数を推計した。具体的には効用関数と予算制約式から需要関数を推計し、その需要関数にもとづいた需要額と州レベルのタバコとガソリンの消費額のデータが一致するようにモデルを推計した。 推計の結果、消費者は所得の3%近くをガソリンの消費に費やし、他の州へ買い物に行くのは州の人口のうち約3.3%であることがわかった。一方タバコに関しては、消費者は所得の4.5%近くをタバコの消費に費やし、他の州へ買い物に行くのは州の人口のうち約6.7%の割合であることが分かった。またガソリン、タバコの需要の価格の弾力性はそれぞれ平均‐0.76, ‐0.59であることが分かった。 以上の結果から2つの結論が推測される。第一にガソリンとタバコの支出が所得に占める割合はそれほど高くないこと、またわざわざ他の州にまで買い物に行く人が少ない事から、州政府にとって自分の州の住民が他州へ買い物に行くことと他の州の住民が購入に来ることはそれほど税収に大きな影響を与えるわけではないことがわかる。つまり水平的税競争の大きな要因である『州間を移動する購入者』がそれほど大きくなく、水平的税競争がほとんどない可能性が推察される。 第二に、政府が税収最大化を目的とするリバイアサンであれば、需要の価格弾力性が‐1以下になるように税率を設定することが理論的に説明されている。つまり2つの財の需要の価格弾力性は‐1以上であったことから、州政府はリバイアサンであるよりも、国民の厚生の最大化を図るベネボラントな政府である可能性が高まった。これを受けて、州政府の目的関数は住民の厚生の最大化を図る関数に設定して推計する必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
進展が少し遅れている要因として以下の3つがあげられる。 1.消費者の効用関数のパラメーターを推計する際に「Identification」の問題が生じた。具体的にいうと、タバコとガソリンの消費額のデータが州全体のものしかなく、州内あるいは州外の住民による消費額がそのうち何パーセント占めるかというデータが存在しなかった。このため、効用関数のパラメーターを推計する際、パラメーターを求めるための条件式とパラメーターの数が一致せず、パラメーターがきちんと推計されないのではないかという問題が生じた。この問題の解決法を探るのに時間を要した。 2.同じ州の住民でも住んでいる場所によって移動コストが違うため、どの州に買い物に行くかは異なる。この同じ州における住民の違いを配慮するためには、州内における人口分布に考慮して需要関数(つまり効用関数)の推計を行わなくてはならない。この論文のもととなる博士論文では非常にアドホックな人口分布を仮定して推計をしていたのだが、今回はできるだけ現実に近い人口分布を求めるために、州の中心都市、市レベルの人口の数を集計して各州の人口分布を大雑把にではあるが推計していたため、時間を要した。 3.9月に夏季集中講座を他大学に依頼され、その準備に時間がかかり、夏の間本研究に専念することができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に州政府の目的関数のパラメーターを推計する。州政府が税収の最大化を目的とするリバイアサンではなく、住民の厚生の最大化を目指すベネボラントな政府に近いことが分かったので、消費者の効用を最大化させる政府の目的関数を構築する。州政府はこの目的関数を最大化させる税率を採用するため、この目的関数を税率で微分した一階の条件がゼロになるはずである。この条件をモーメント条件として採用し、GMM(General Method of Moment)によって州政府の目的関数のパラメーターを推計することができる。 第二に水平的・垂直的税競争の規模と方向性を示す反応関数の傾きを推計する。州政府の目的関数を税率で微分した第一階の条件式を更に連邦政府や他の州政府の税率で微分することによって反応関数の傾きを示す式が導かれる。この式に求められた消費者の効用関数のパラメーター、州政府の目的関数のパラメーター、税や価格等のデータを代入することによって州ごとの他の州政府や連邦政府の税率の変更に対する反応関数の傾きを推計する。またモデルを吟味することによって、水平的・垂直的税競争が生じる構造と要因について分析する。 第三に本研究の結果とWeighted Matrix Methodを用いた既存の研究との結果の違いについて分析する。Besley and Rosen(1998)とDevereux et al(2007)はWeighted Matrix Methodを用いて同じアメリカの州レベルのタバコ税・ガソリン税の税競争について分析している。この既存の研究と本研究の結果の違いとその原因について分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度においては国際学会(7月予定のAustralia Meeting of the Econometric Society)、国内学会(10月予定の日本財政学会)にそれぞれ申し込む予定であり、その旅費としてそれぞれ35万、10万ほど使用するつもりである。また秋頃までには大まかな結果をだして論文を作成し、第一回目の英語の論文校閲をする予定である。この論文校閲費にだいたい15万~20万の費用がかかると考えられる。その他には指導教官である今井晋先生(University of Technology Sydney)と研究の成果を議論する為にオーストラリアへの出張を予定しており、その旅費として30万ほど見込んでいる。また本研究をもとにもう一つの論文の作成を考えており、その共著者である丸山先生(University of New South Wales)や渡辺先生(Northwestern University)と議論する為に彼らが帰国の折には関東か関西でお会いするための費用として10~15万前後を見込んでいる。
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Research Products
(3 results)