2012 Fiscal Year Research-status Report
近代華南におけるヒトの移動に関する社会経済制度の研究:労働者の移動と人身売買
Project/Area Number |
24730289
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 衛 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50346053)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 華人 / 華工 / 廈門 / 北ボルネオ / 移民 / 香港 / 福建 / イギリス |
Research Abstract |
史料収集としては、京都大学内の各図書館で中国語・英文史料の収集を進めたほか、東京大学総合図書館ではイギリス外交文書(FO371)、国立国会図書館では英文定期刊行物の収集を行った。また、イギリスでは、ロンドンの国立公文書館でイギリス外務省文書・植民地省文書を収集し、またロンドン・メトロポリタン文書館で北ボルネオ関連の企業文書の収集を行った。 文献研究としては、『海の近代中国──福建人の活動とイギリス・清朝』名古屋大学出版会、2013年2月を公刊し、その中では福建から東南アジアへの移民の果たした役割、なかでも英籍華人の活動について解明した。これは、近代中国の海域史に関する初めての本格的な研究書という意義をもつ。現在は、辛亥革命期におけるイギリス北ボルネオ会社による華人労働者移民事業の分析を行い、華人労働者の移動に関する組織のあり方の検討を進め、論文としてまとめつつある。 対外的な発信としては、台湾の中央研究院で行われた第4届国際漢學会議において「晩清時期廈門英籍華人的経済活動」というタイトルで中国に渡来したイギリス籍華人の役割について報告した。また南アフリカのステレンボッシュ大学で行われた第16回世界経済史会議においては、“Trade and Concession: Opium Trade in Canton before the Opium War”というタイトルで報告した。いずれも、漢學・経済史の分野では世界的な学会であり、そこでの報告の意義は大きい。このほか、東京大学東洋文化研究所で行われた国際ワークショップ “Sugar and Slavery towards a New World History”においても“The end of the coolie trade in southern China”というタイトルで報告を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料収集については、日本国内における史料収集は、京大内の各図書館(附属図書館・人文科学研究所図書室・文学部図書室・経済学部図書室・東南アジア研究所図書室)においては中国―東南アジア間の移民に関連する文献の収集を積極的に進めている。また、東京大学総合図書館などにおけるイギリス外交文書(FO371)の収集も順調に進んでいる。イギリスにおいても、日本にない文献の収集を積極的に進めることが出来た。具体的には、イギリス国立公文書館(The National Archives)において、東南アジア移民に関して外務省の在華領事報告(FO228)、植民地省のイギリス北ボルネオ会社(CO531、CO874)・香港政庁関連(CO129)の文書の収集に成功している。また、ロンドン・メトロポリタン文書館(London Metropolitan Archives)においても、北ボルネオに進出した企業の文書の収集に成功した。課題としては、中国語の史料収集があるが、これもデータベースなどを利用して効率的に進めつつある。 文献研究としては、単著『海の近代中国──福建人の活動とイギリス・清朝』の公刊により、研究課題に関連した清末福建南部を中心とした海域史研究をまとめることができた。該書は華南から東南アジア以外への労働力移動である苦力貿易問題、東南アジアから中国に渡来したイギリス籍華人の活動、東南アジアとの貿易関係を含んでいる。また社会史・経済史を融合したものとなっており、今後の研究目的を達成するための基礎となる研究である。また、北ボルネオ移民に関しては、イギリス外交文書・植民地省文書の分析を進めて、経済史・社会史に目配りした論文をまもなく投稿する予定であり、研究は順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の日本語、漢文、中国語、英文史料の収集を生かしつつ、国内では関西・関東圏以外においても日本語史料の補充を進める。国外では、イギリス、香港、東南アジアにおける英文史料収集を積極的に進める。具体的には、イギリスの国立公文書館・英国図書館などで史料を追加的に収集するほか、香港の香港大学図書館、香港政府档案処では労働者の移動と人身売買の両面に関する史料を、シンガポールのシンガポール国立図書館、シンガポール国立大学図書館、シンガポール国立公文書館、華裔館などにおいては主として労働力の移動に関わる文献収集を進める。必要があれば、最終的な移民先であるマレーシアのサバ州をはじめとする他の東南アジア諸国・諸地域においても文書を収集する。 文献研究としては初年度に行った国内およびイギリスにおける史料収集を生かしつつ、新たにイギリス・香港・東南アジアで収集した史料をつきあわせる。労働力の移動については、中国人による移民制度に関わる香港・シンガポールにおける利権集団の実態を解明する。人身売買に関しても中国沿海から東南アジアに至る広域的な制度に対する考察を進めていく。 発信としては国内外の学会に引き続き積極的に参加し、本研究に基づく報告を行うと同時に、他分野との交流を一層深め、そこでの議論を研究のとりまとめの方向に生かしていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度も文献研究実施のための史料収集に重点を置くため、予算も旅費に重点的に配分する。イギリス・香港・東南アジア方面での史料収集に重点をおくために旅費では主に海外旅費に配分する。広域での文献調査になるため、研究費の節約のため、効率的な旅程を組むことを予定している。また残りの旅費は関東・関西圏以外も含めた国内の図書館における史料収集のために使用する。なお、国内外への出張の際には、学術的な交流や発信も行うことにより、経費の有効使用を図る。さらに次年度は本研究の成果を国際会議(英語・中国語)や英文論文・中国語論文の発表によって対外的に積極的に発信していく。そのために本年度は英文・中国語の校正に要する謝金にも重点を置く。さらに、関連する図書を積極的に購入するために物品費も若干使用する。
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Research Products
(6 results)