2012 Fiscal Year Research-status Report
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24730292
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
三浦 壮 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (60432952)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地域工業化 / 石炭産業史 / 地方資産家 / 名望家 / 企業と株主 / 地方金融史 |
Research Abstract |
山口県文書館・九州大学記録資料館で地域工業化に関わる資料の調査を進めるとともに,宇部地域の旧家資料を調査し,目録の作成および使用の許可を得ることに努めた。 これまで産業革命期における地方の企業勃興の要因は,谷本雅之による高リスク低リターンを行う地域振興を重視した投資主体による「名望家的投資」(社会的動機)と,中村尚史による地元株は中央株よりも高リターンを投資家に与えていたとする経済的動機に大きく整理されていた。 ところが,本研究を進めるなかで,時期は異なるものの,主として株式投資にかかわる地方工業化の論理が,必ずしも経済的動機と社会的動機のどちらか二者択一で整理できるものではなく,特に地方工業化は事業の成功こそが地域の発展につながり(社会的動機),並行してそれが株式配当や株式時価の増加(経済的動機)に結びついていることを資料から読み解くことが可能になった。その際の投資動機としては,近世以来の人的紐帯に成立の基盤を置く「連帯的強制」と,地域社会への「貢献意欲」がみられたことが記述資料と数量データを併用したことで一定程度明らかとなった。 これらの成果の一部を社会経済史学会全国大会自由論題報告(於:名古屋大学)で「戦間期日本における鉱業資本家と地方工業化の展開」とする表題で報告した。報告で出た意見を取り入れ会誌へ投稿し,『社会経済史学』第78巻4号に「戦間期日本における鉱業資本家と地方工業化の展開ー山口県宇部地域における株主の投資行動と所得構造を事例としてー」という表題で掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
資料が思いのほか出てきたことによる。また査読付の専門誌への掲載も達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
投資動機について一次資料に基づく分析が望まれる。資料館の資料はすべてみつくしたが,有力な史料が出てこない。旧家へよりいっそう綿密な調査をお願いし,一次資料の発掘に努めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主に旅費に配分を行いたい。資料調査のためには何度も資料のある土地へ出向く必要があるためである。同時に,必要な備品の購入も行う予定である。
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