2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730302
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
瀬戸林 政孝 福岡大学, 経済学部, 准教授 (10383952)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 中華人民共和国 / 近代中国 / 制度設計 / 市場 / 取引 / 桐油 |
Research Abstract |
平成24年度には、資料収集及び研究報告を行った。資料収集では、中国上海における上海市档案館にて、『租界档案』及び『同業公会档案』の収集を行った。日本国内では、山口大学・愛知大学・東京大学・神戸大学・東洋文庫の各附属図書館及び研究所にて資料収集を行った。海外、国内で収集された資料は、20世紀初頭(1900年代から1930年代)の揚子江中上流域における桐油取引に関するものである。本資料を通じて、20世紀初頭の桐油市場における取引慣習及び不正問題の発生の実態がわかる。さらに、本資料の桐油取引の分析を通じて、20世紀初頭の新たな制度の形成過程が明らかにされるであろう。 また、平成24年度には複数回の研究報告を行った。「近代中国における財市場の再設計‐揚子江中上流域の桐油取引‐」というテーマで、東京大学経済学部経済史研究会(6月18日)、福岡大学東洋史学研究会(10月21日)、GCOE歴史分析班ワークショップ(11月24日)にて研究報告を行った。 さらに、平成24年7月には、World Economic History Congress(南アフリカ)での国際学会にて成果報告を行った。国際学会で報告された内容は、1910年代までの棉花取引で生じた不正取引がどのような制度設計によって解消されていったのかについてである。本研究は20世紀初頭の制度設計の一つの事例を示しており、本研究を進めるにあたって重要な先行研究である。また、9月には、Asian Historical Economics Conferenceにて研究報告を行う機会を得て、本研究に関して様々なコメントを頂いた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のテーマは近代中国の市場設計と制度変化に関する実証研究であり、近代中国の市場における制度設計に焦点をあて、新たな制度の形成過程とその制度が社会にどのように定着したのかを検討することによって、近代中国の商品市場における制度変化を実証的に明らかにすることを目的としている。特に、本研究では三つの課題を挙げている。そのうちの第一の課題(混油問題が起こった要因を市場における新旧のルールの衝突に注目して明らかにする)及び第二の課題(新しいルールに関する情報が社会に定着していく過程と捉え、市場参加者に新しいルールの情報が流れる仕組みを明らかにする)に関しては、十分達成された。第三の課題に関しても順調に進んでいる。 また、本研究はすでに複数の研究会等で成果報告を行うことができた。そのため、本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は順調に進んでいるが、本研究の実証水準をあげることが今後の課題と考える。研究の質を飛躍的に向上させるための一つの手段として、史料の収集及び分析があげられる。本研究では今後商品の品質の調査機関である検験局に関する史料を収集する必要がある。本史料は中国国内の档案館に所蔵されている。そのため、中国における資料収集を今年度中に行う予定である。本資料を収集することによって、研究論文における実証面の充実を図ることが可能となるであろう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究費が生じた要因は、昨年度中に購入予定であった一部の資料が発刊されなかったためである。また、購入を希望していた一部の図書が絶版となっており、購入することができなかった。本研究費は引き続き購入を予定していた図書の購入費にあて、また、絶版図書に関しては、古本等の購入等の別の購入方法を選択するつもりである。
|