2013 Fiscal Year Research-status Report
特許情報を利用したイノベーションのミクロ的基礎の研究
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24730307
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
小阪 玄次郎 上智大学, 経済学部, 准教授 (90582297)
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Keywords | イノベーション / 技術経営 / 研究開発組織 / マルチレベル / 特許 |
Research Abstract |
平成25年度は、企業がイノベーションに適応するうえでの研究開発組織のあり方を探索するために、先行研究のレビューと、分析の端緒としての単一事例分析を進めた。 まず先行研究のレビューでは、研究開発組織が保持するスキルの多様性と技術開発成果との関係を検討するために、シナジー、範囲の経済、技術の多角化という3種類の議論の流れを追った。その結果、議論が進むにつれて開発組織におけるスキルの多様性と開発成果との関係については一貫した結果が得られなくなってきていること、その背景にある理由として、一概にスキルの多様性と言っても、個人レベル、集団レベル、ネットワーク・レベルといったように異なる分析レベルがありうるにもかかわらず、先行研究はそれら複数のレベルにおよぶ多様性のあり方について必ずしも明確に識別してこなかったことが明らかになった。 このレビューをふまえ、TDKの磁気ヘッド事業をパイロット・ケースとした事例研究を行った。既存研究では、当該事業がイノベーションに適応するための組織的特徴として、磁気ヘッドという事業領域を越え、磁気ディスクという関連他部品までも研究開発を行っていること、それによって製品アーキテクチャの変化に対応できるようになっていることが挙げられている。しかしその具体的な開発組織のあり方については必ずしも分析されていなかった。本研究の分析の結果、磁気ヘッドと磁気ディスクの技術者は集団としてはそれぞれ独立に研究開発を進めており、二者の技術者ネットワークを少数の材料技術者が媒介しているという組織形態であることが明らかになった。この発見事実は、自社の事業領域を越えた知識獲得を行う上で実際にいかなる組織設計が可能でありうるのかを検討する端緒となるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、前年度に引き続き、先行研究の検討と、予備的な事例研究を行った。先行研究レビューについては、新たに投稿論文を執筆しており、26年度に投稿を行う準備ができた。また事例研究については国際学会発表を行っており、一定の成果を達成したと考えている。特許データをもとにした研究開発組織の分析の土台づくりは進展している一方、インタビュー調査による質的情報の充実が引き続き次年度以降の課題として残されるが、おおむね研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、セラミックコンデンサ業界の3社を対象として、それぞれの研究開発組織の形態と開発成果について特許データによる詳細な分析を加えていく。データ分析の結果と先行研究レビューの成果とを結合し、同時に、インタビュー調査による質的情報の充実を図る。 また、平成25年度に行った先行研究レビューと事例研究については、いずれも論文を執筆中であり26年度中の投稿を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
インタビュー調査が首都圏中心となり、旅費が当初想定ほどにはかからなかったこと、イギリスでの国際学会発表の支出総額が当初想定よりも下回ったことが主な要因である。 計画の最終年度であることから、成果発表として国際学会での報告を増やす予定である。
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Research Products
(2 results)