2013 Fiscal Year Research-status Report
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24730312
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
江夏 幾多郎 名古屋大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (00508525)
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Keywords | 人事管理 / 受容 / 正義 / 承認 / 利害調整 / ヘゲモニー / プラグマティズム |
Research Abstract |
平成25年度における研究業績としては,第一に,組織的正義論についての批判的検討,さらには日本と中国におけるインタビュー調査に基づいた,企業からの評価・報酬を従業員が受容するメカニズムについての理論的検討がある(所収:江夏幾多郎「従業員はいかに処遇を受容するか―日本と中国の職場から」『国民経済雑誌』208(1), pp.37-58, 2013年)。 従業員は,雑多な関連情報を見出して,ある処遇が受容するに足るかどうかの判断を行う。そうした「計算」は,報酬についての期待と予測そのものが相互参照的であるため,処遇を受容することに付随する未来に対して希望を持てるかどうか,という雑駁かつ定式化困難なものである。そこでは,不正義への感受性が判断の一定の支えとなる。処遇を受容するために従業員が発揮する柔軟性を引き出すため,人事管理としては,従業員がどのような承認機会を欲しているかを見出し,それに沿った社会状況としての報酬分配を行う必要がある。 第二に,こうしたミクロなコミュニケーションを組織の成立原理として理解するため,評価・報酬を含めた人事管理を利害調整活動と捉えた理論的検討を行った(所収:江夏幾多郎「利害調整活動としての人事管理―理論と応用」一橋大学大学院商学研究科日本企業研究センターワーキングペーパー(179), pp.1-19, 2014年)。 これまでの研究では,「よき人事管理」についての法則的知見の確立が目指されてきた。しかし,利害調整が人事管理の主要な側面であることを踏まえると,「よき人事管理」は利害調整の中で浮上する暫定的な合意にすぎない。しかしそれは,「よき人事管理」を探求することが研究目的として不適切であることは意味しない。それを目標として掲げ,掲げ直すことでこそ,人事管理に関わる人々は,目下の問題を漸次的に発見・克服することが可能になるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的を達成するためには,先行研究のレビューに基づく理論研究と,様々な手法を利用した経験的研究を並行的に進め,なおかつ双方の研究から得られた示唆を融合させる必要がある。その上,経験的研究においても,インタビュー等の定性的調査と,サーベイ等の定量的調査の同時進行が目指されている。 元来の計画では,平成25年度末までに,定性的調査から得られた示唆を元にサーベイ調査のデザインを行い,実際に調査を行い,結果を取りまとめる予定であった。しかし平成25年度末の時点では,サーベイ調査のデザインに取り掛かるまでしか行えず,また,調査対象の選定も初に就いたばかりであり,平成26年度まで研究を継続させることとした。 以上が,研究の達成度を「やや遅れている」とした理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した現状を踏まえると,平成26年度の比較的早期の段階から,サーベイ調査を行える段階であると判断できる。理論的研究や定性的研究はすでに集約の段階に入っており,これらの知見も踏まえ,当初計画以上の精緻な調査・研究の枠組みを設定し,実行してゆきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度中に,理論研究と定性的調査の成果に基づくサーベイ調査を実施する計画であったが,調査の枠組みや調査協力者を期間内に確定させられなかったため。 残額の全ては,郵送質問紙調査ないしはインターネットを利用した調査のための費用に充てられる。
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