2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24730313
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
服部 泰宏 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (70560150)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 心理的契約 / 調整 / 契約デザイン / 契約不履行 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本企業と個人との相互作用にギャップが生じた時に、それがどのようなメカニズムで調整されるのか、ということを経験的に明らかにすることである。具体的には、1.相互期待にギャップが生じたとき、企業と個人はどのようにそれに対応するのか、2.両者の関係が維持されるためには、どのようなプロセスで新たな期待が確立される必要があるのか、という2つの問いに答えることを目指す。24年度の実施計画は、第4次アステラス調査(アンケート調査)を実施することであり、主として1.の問に答えることが目指された。以下、上記の目的及び実施計画に照らし、平成24年度の研究実績を記述する。 平成24年度には、大きく分けて2種類の調査が実施された。まず第1に、実施計画通り、アステラス製薬株式会社における社員を対象としたアンケート調査を実施した。全社員を対象に、会社と個人の種々の相互期待とその履行状況、そして組織側の履行に対する反応に影響を与えそうな様々な要因の測定が行われた。分析の結果、不履行に対する個人の反応オプションは、第1に「自己の期待水準の変更」であること、ただし、新入社員は「自己の履行水準の変更」や「離職」といったよりドラスティックな反応オプションを選択することが改めて確認された。 平成24年度には、上記の調査に加えて、日本企業のビジネスパーソン533名を対象とした質問票調査を実施した。この調査の目的は、組織側による契約不履行の影響、そして不履行に対する社員の反応が、事前の「契約デザイン(相互期待が雇用関係の開始段階でどの程度明確になされるか)」によってどのように影響を受けるか、ということを検証することである。分析の結果、雇用関係の開始段階において、お互いの相互期待を明確にしておくこと(契約の明確化)が、不履行の発生およびそれが与えるネガティブな影響を緩和することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究の主眼は、相互期待にギャップが生じたとき、企業と個人はどのようにそれに対応するのか、ということを明らかにすることであった。アステラス製薬調査により、相互期待にギャップが生じた際の反応オプションとして、1.「自己の期待水準の調整」1.「自己の履行水準の調整」3.「離職」の3つがあること、そうした中で、個人にとっての第1のオプションは1であるのに対し、新入社員は2や3を選択する傾向にあることなどがわかった。この段階で、上記の課題に対してある程度の回答が出せたと考えている。 平成24年度は、それに加えて、調査会社を通じた質問票調査により、雇用関係の開始段階での契約デザインが、上記のようなプロセスに与える影響についても検討することができた。これまでの研究は、ある契約が成立しているということを前提に、そのうちどのような部分において不履行が生じており、それがどのような帰結をもたらしているか、という「事後的な」問題に焦点化したものであった。これに対して本研究では、そもそも契約は「事前に」どのようにデザインされており、そうしたデザインがどのように事後的なプロセスに影響を持つのか、ということを検討した。雇用契約に関わる問題を、雇用関係が開始される事前の段階におけるデザインの問題、そして雇用関係開始後の契約履行とその成果という事後問題という時間的な流れの中で捉えるという、重要な視点を提示できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度においては、1.アステラス製薬における第5次調査と2.調査会社を通じた第二次質問票調査の実施、および経済学における「契約」に関わる議論の体系的レビューを行う。1および2の主眼は、平成24年度における発見事実のロバストネスの検証である。とりわけ、事前の「契約デザイン」に関して、平成24年度調査よりもさらに踏み込んだ検証を行っていく。そのためには、経済学において、雇用契約のデザインに関してどのような議論がなされているか、ということに関わる知見の整理が欠かせない。 平成26年度においては、上記の調査結果を受けて、契約のデザインに関する測定尺度の開発を意図した第6次アステラス調査および、研究成果のまとめを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査会社を通じて日本企業に所属するビジネスパーソンを対象とした質問票調査を実施する予定である。500名規模の調査を実施する予定であり、50万円ほどの支出が予想される。
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Research Products
(7 results)