2015 Fiscal Year Annual Research Report
タイにおける日系企業を中心とした産業集積に関する研究
Project/Area Number |
24730316
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 厚海 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (10388712)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 産業集積 / タイ / 日系企業 / 自動車産業 / サプライヤー・システム / 育成購買 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではタイにおいて多数の日系企業、特に日系自動車関連メーカーが工業団地に進出していく中で、日系企業の生産拠点と周辺に日系社会をつくるという形で産業集積が形成されていることが明らかとなった。 自動車産業に注目し、特に、トヨタとトヨタ系サプライヤーを重点的に調査した結果、タイでは、日本と同様の日本型取引慣行(系列、長期継続取引等)が忠実に再現されている点に大きな特徴があることがわかった。主要部品については日系企業が圧倒的に多く、Tier2-3サプライヤーにおいても日系企業が多い。 また、代表的メーカーであるトヨタは、Tier1サプライヤーに対して積極的に技術支援を行うことで、QCD向上に努めていた。一部大手Tier1サプライヤーも、Tier2をパートナーとして捉え、Tier2への無償の支援を通して、技術の向上が行われていた。このようにタイでは日本と同様に、サプライヤーを買い叩くのではなく、サプライヤーを選別した上で、モノづくりの製造工程に入り込みながら、技術支援を通じてサプライヤーを育成していく調達手法(育成購買)が採られていた。 育成購買は、サプライヤーの顧客に対するコミットメントを高めている可能性が高く、サプライヤーと連携しながら共同問題解決を行っていく上で極めて重要である。特に、トヨタとトヨタ系サプライヤーは一体となって連携しており、部分的に系列関係が崩れているとはいえ、強固な関係が存在する。また、育成購買は温情主義的性格をもち、特にトヨタにおいて顕著な傾向が見られる。この調査結果については今後、実証研究の裏付けが必要である。 以上のように、タイの産業集積は日系企業主体となって形成されてきた、特異な産業集積であること、その背景には、日系自動車メーカーは海外拠点でも、育成購買を通じて日本型取引慣行を維持しようとする傾向があることを明らかにした点に意義があると考えられる。
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