2012 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の競争力強化に貢献する情報通信技術の戦略的活用モデルについての実証研究
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24730324
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
工藤 周平 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (60549153)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 戦略的情報通信技術活用 / 中小企業 / 競争戦略 / 情報通信技術 / 実証分析 / 促進要因 |
Research Abstract |
中小企業の競争環境と情報通信技術(ICT)活用の実態について秋田県内の企業を対象にPorterの理論的枠組みを用いて調査を行った。また、中小企業の戦略的ICT活用を促進する重要要因として、トップ・リーダーシップ、コミュニケーション、価値測定、パートナーシップ、ガバナンス、ITスキルの6つを取り上げ、秋田県内企業が重視する要因、要因間の構造について分析を行った。国内外の学会で得られた成果の公表を行った。平成23年度に秋田県内に本社をおく企業を対象にアンケート調査を実施したが、そこで得られたデータを用いて分析を行った。秋田県内企業の競争要因の中で最も強い要因は顧客の交渉力であり、企業の価値活動の情報化では、全般管理や購買物流の情報化が重視されていることが明らかとなった。戦略的ICT活用の促進要因では、トップ・リーダーシップが最も重視されており、次いでコミュニケーションに対する重視度が高かった。顧客への対応を最重要課題とし、企業の全般管理活動や購買物流活動の情報化を重視するとともに、企業のIT活用促進ではトップ・リーダーシップとコミュニケーションが重要となる中小企業の姿を捉えることができた。戦略的IT活用促進要因間の因果構造を分析した結果、トップのリーダーシップを起点としてコミュニケーションやパートナーシップの重視度が高まり、ガバナンスの重要度が高まる結果としてITスキルの重要度が高まるという構造が明らかとなった。トップ・リーダーシップ、コミュニケーション、パートナーシップ、ガバナンスといった要因が十分でない場合には、中小企業のITスキル向上のための取り組みは促進されないことが示唆されている。平成24年9月から10月の期間にアンケート調査を実施し、422社から回答を得た。ICT活用効果や戦略的ICT活用促進要因の実際の取り組みに関するデータを収集し、予備的な分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終的な目標は、中小企業の競争力強化のためのICT活用重要要因を抽出し、企業間競争に効果的に対応するためのICTの新たな活用方法を提案することである。平成24年度は、平成23年度のアンケート調査で収集した秋田県内の中小企業354社のデータ分析を行い、中小企業の競争に対する意識の実態を明らかにした。競争上の最重要課題に効果的にICTを活用することは戦略的ICT活用の重要なポイントの1つであり、中小企業の企業間競争で現在何が最重要課題になっているのかを明らかにすることができた。平成24年度は秋田県内企業422社のデータをアンケート調査によって新たに収集し、ICT活用効果や戦略的ICT活用促進要因に対する実際の取り組み状況について調査を行った。平成23年度と平成24年度で収集したデータから、戦略的ICT活用を促進するどの要因が重要視されており、実際にどのような取り組みが行われているのかを明らかにすることができた。要因間の構造を分析し、戦略的ICT活用を促進するためにはどの要因の水準を上げることが有効なのかを明らかにすることができた。平成24年度に収集したデータから、中小企業が得ているICT活用効果の現状を明らかにすることができた。平成24年度の研究成果によって、最終目標を実現するための基礎を固めることができた。たとえば、競争上の最重要課題となっている顧客への対応にICT活用はどの程度貢献しているのかを今後明らかにすることによって、競争力強化のためのICT活用の重要要因を抽出することができる。また、戦略的ICT活用の促進要因に関する現状を明らかにしたが、それら要因とICTを活用した競争要因への対応状況の関係を分析することで、中小企業における戦略的ICT活用の有効な方法を導出することができる。研究目的の達成に向けて当初の計画通りに研究が進んでおり、おおむね順調であると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果を基にして中小企業の戦略的ICT活用の現状を調査し、有効な方法について考察する。具体的には企業が競争力強化のためにどのような活動を実践しているのか、その活動の実践にICTがどの程度活用されているのかを調査する。平成24年度は戦略的ICT活用を促進する要因に焦点を当てて研究を行ったが、平成25年度は阻害要因に焦点を当てて実態を明らかにする。これらの目標を達成するために、平成25年度も当初の計画通り、郵送によるアンケート調査を実施する。 平成24年度のアンケート調査で対象とした1016社の企業を調査対象企業とする。300社程度からデータを収集することを目標とする。調査時期は、平成25年7~8月を計画している。平成24年度は主にアンケート調査によりデータを収集し分析を行ったが、これらの分析の妥当性を検証するために秋田県の企業を対象にインタビュー調査を行う。経済産業省主催の「中小企業IT経営力大賞」において過去にIT経営実践認定企業の認定を受けた秋田県内企業をICTを積極的に活用している企業として調査対象企業とする。5社程度にインタビューを行うことを目標とする。調査時期は平成25年9月~12月を予定している。インタビュー調査では、競争環境に対する意識、競争力強化のための取り組み、その取り組みに対するICTの適用や貢献度の状況、戦略的ICT活用の阻害要因、今後の競争力強化のための取り組みと新たなICT活用計画の有無といった質問項目を用意し、アンケート調査で収集したデータの分析結果と照らし合わせ、アンケート調査で収集したデータ分析の結果の妥当性を検討する。これまでのアンケート調査やインタビュー調査で得られたデータの総合的な分析を行うとともに、関連する先行研究の文献調査を行い、戦略的ICT活用の現状と有効な方法について考察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画通り、平成25年度は第2回のアンケート調査を実施する計画である。平成25年7~8月の期間で、平成24年度の調査で対象とした1,016社の企業を調査対象企業とする。送付はクロネコメール便を活用する計画であり、郵送料金として1,016社×80円=81,280円必要となる。企業からの返信の分の料金として、120円切手×1,016社=121,920円必要となる。調査票や報告書を送付するための封筒が必要であり、大学用の角2封筒1,000枚×22円(1枚の料金)=22,000円、長3封筒500枚×17円=8,500円必要となる。封筒の封をするために両面テープを用いる計画であり、そのための費用として8,000円必要となる。平成25年度は、インタビュー調査も実施する計画である。これまでいくつかの秋田県内企業に対して既にインタビュー調査を行っているが、交通費として1回の調査で平均4,000円かかっている。5社に対して実施する計画であるため、4,000円×5社=20,000円必要となる。研究の成果は国内外の学会、また、論文としてまとめて積極的に公表する計画である。平成25年度は国内の学会(日本情報経営学会や日本経営システム学会など)で4回発表する予定であり、そのための費用として40,000円(発表1回あたりの平均必要費用)×4回=160,000円必要となる。国際学会で2回(ICPM2013とICBMG2013)発表する計画であり、そのための費用として150,000円(発表1回あたりの平均必要費用)×2回=300,000円必要となる。学会参加費、論文別刷費用、製本代金として80,000円必要となる。
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