2014 Fiscal Year Research-status Report
制度の創造・変革を担うリーダーシップに関する理論的・経験的研究
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24730328
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
浦野 充洋 静岡県立大学, 経営情報学部, 助教 (10613614)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 制度派組織論 / 実践論的転回 / 制度的実践 / 制度的リーダーシップ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、制度の創造や変革を担うリーダーシップを理論的・経験的に検討することにあった。経営組織論のなかで、制度の創造や変革のメカニズムを理論的に検討しようとしてきたのが制度派組織論である。しかし、未だその理論枠組みが十分に整えられていない状況にある。こうした現状に対して(1)制度派組織論を中心とする文献レビューを通じた理論枠組みの構築と(2)経験的な調査研究を通じた実践的な含意の追求を目的としてきた。 (1)文献レビューに関して、本研究では近年の制度派組織論で注目を集める制度的実践に関する体系的なレビューと、旧制度派と呼ばれる古典的な研究に遡った制度的リーダーシップの再検討を予定していた。平成24年度から平成25年度にかけて制度的実践を中心に考察し理論枠組みを構築するに至ったことから、本年度は制度的リーダーシップを中心に考察を行った。その結果、制度的リーダーシップに求められる役割は、第一に組織を取り巻く利害にかなうように組織目標を掲げ、利害を言語的に統制していくことに求められる。しかし、組織目標が掲げられ利害関係が調整されたはずの組織も、いったん制度化されてしまえば、そこに新たな利害が見出される。それゆえに、第二に、誰を利害関係者と認め、その利害関係者と、どのような関係と取り結ぶのかという、再制度化に向けた臨界的決定を必要とされていることが示された。 (2)経験的な調査研究に関しては、上述の理論枠組みのもと、今日ではオフィスやビルのファシリティマネジメントを手がける明豊ファシリティワークス株式会社の事業転換プロセスの分析を行った。具体的には、経営者によって掲げられた組織目標が、いかなる利害を触発することで事業転換が促されてきたのか。こうした事業転換のなかで、経営者による、いかなる臨界的決定によって再制度化が果たされてきたのかを分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、平成25年度に制度の創造に関する研究を遂行し、本年度は制度の変革に関する研究を遂行する予定であった。しかし、調査先の関係から制度の変革に関する研究を、当初の予定より前倒しで進められることになったため、順番を入れ替えて平成25年度は制度の変革に関する研究を行い、本年度に制度の創造に関する研究を行うこととした。本年度は、こうした平成25年度に計画された変更にもとづいて、制度の創造に関する研究を中心に行った。 進捗の状況としては、第一に、文献レビューを通じて、制度の創造を捉えるための理論枠組みの構築を行った。具体的には、まずは、制度的リーダーシップを中心に、今日では旧制度派と呼ばれるセルズニック(Philip Selznick)などの古典的研究から最新の研究までレビューを行った。さらに、制度的リーダーシップに対する理解を深めるために、制度派組織論のなかでも言語として制度を捉える研究のレビューを行い、制度的リーダーシップを捉えるための理論枠組みを検討した。第二に、この理論枠組みのもと、実践的な含意を追求すべく、先述のように明豊ファシリティワークス株式会社における事業転換のプロセスの分析を行い、制度的リーダーシップに関する考察を行った。これらの成果は、制度派組織論の論文集において公刊されている。 以上のように、昨年度に研究の順序の入れ替えを行ったが、その入れ替えに従って、本研究は順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は制度派組織論に根ざしており、そのなかでもとくに制度的実践と制度的リーダーシップという二つの概念に注目して、検討を行ってきた。進捗の状況としては、本年度までで両概念それぞれにもとづいた理論枠組みを構築するとともに、それらの枠組みにもとづいた分析も既に行われている。 最終年度となる平成27年度では、これまでの分析を通じて明らかになった発見事実をもとに、理論枠組みの研鑽、再検討を行う予定である。なお、これまでの分析の途上、方法論についてより深く検討する必要が見出されたことから、とりわけ方法論的な問題に焦点をあてる必要があると考えている。欧米の経営組織論に関する学術雑誌では多くの制度派組織論に関する論文が発表されて続けており、また、平成26年度に開催されたアメリカ経営学会の経営組織論部門では半数以上が制度派組織論に関する発表であった。欧米の学術雑誌、学会などでは引き続き制度派組織論に関する研究が発表されていくことが予想される。そのため、上述のように理論的な研鑽、再検討を行うにあたり、継続して最新の学術雑誌をフォローするとともに国際学会に参加するなどして積極的な情報収集にも努めていきたい。 経験的な調査研究としては、ひとまず当初に予定していた調査研究は全て遂行したが、より多くの実践的含意を追求するとともに、さらなる理論的な研鑽を目指して、新たな調査研究の機会も積極的に開拓していきたい。
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Research Products
(2 results)
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[Book] 制度的企業家2015
Author(s)
桑田耕太郎・松嶋登・高橋勅徳・ホームズ(上西)聡子・浦野充洋・矢寺顕行・早坂啓ほか
Total Pages
442 (30-52, 55-84, 110-173)
Publisher
ナカニシヤ出版